学長式辞 令和元年度秋季学位記授与式 (2019.9.20)
本日、学位记を受けられる324名の卒业生、修了生の皆さん、诚におめでとうございます。令和元年度の秋季学位记授与式を挙行するにあたり、広岛大学を代表して心からお祝いを申し上げます。とりわけ言叶や文化、生活习惯の违いという壁を乗り越えて、たゆまず努力をされてきた海外からの留学生の皆さんに、あらためて敬意とねぎらいの言叶を赠ります。きょうの喜びはご家族をはじめ友人、先辈、后辈など周りの人々の理解と协力があって成し遂げられたことも、忘れないでいただきたいと思います。
さて、日本の新しい元号が令和となったことは、留学生の皆さんもご存じのことと思います。元号を使う制度があるのは日本だけですが、前の时代に区切りをつけ、新たなスタートを切る意味合いもあるように思っています。新元号の考案者とされる中西进博士は、日本最古の歌集である万叶集研究の第一人者としてご高名です。令和という元号について「令(うるわ)しく平和に生きる时代を筑いていこうとの愿いが込められています」と语っています。
中西先生は1943年から2年间、広岛大学の前身である広岛高等师范学校の附属中学校に通われました。原爆投下の时は东京に移っていましたが、かつての恩师や多くの同级生を失ったそうです。こうした少年时代の体験も、平和への思いにつながっているように思われます。
ご承知のように、広岛大学は被爆から4年后、原爆の惨祸からよみがえった平和都市広岛のシンボルとして「自由で平和な一つの大学」を建学の精神として开学しました。「平和を希求する精神」は本学の変わらぬ理念であり、私も4年前の学长就任以来、「平和を希求し、チャレンジする国际的教养人の育成」に努めてまいりました。
広岛の地にある大学の一员として、私たち一人一人が平和のためにどのような行动ができるか、今こそ真剣に考えるべきだと思います。本日、新たな人生の一歩を踏み出される皆さんも自らの头で考えていただきたいと愿っています。
これから到来する时代は、ビッグデータや人工知能(础滨)がもたらす高度情报化、人?モノ?情报のグローバル化が急速に进む一方で、シンギュラリティに象徴されるように、かつて想像もできなかったような课题が待ち受けているかもしれません。この様な未来にこそ、人としての役割が重要になると思います。
物理学者のアルバート?アインシュタイン博士は最晩年の1955年、若い人たちに向けて次のような助言を雑誌LIFEに寄せています。「重要なのは、問うのをやめないことだ。 好奇心にはそれなりの存在理由がある。永遠性、生命、現実の不思議な仕組みについて、その謎を理解しようと真剣に考えるとき、人は畏敬の念を抱かずにはいられない。毎日この謎をほんの少しでも理解しようとするだけで、十分なのだ。」私自身も「なぜ?」と問い続けることが、学問のみならず、人生においても大事であると確信しているところです。
同じ1955年の7月、东西冷戦がエスカレートする中で、アインシュタイン博士は哲学者のバートランド?ラッセル卿とともに「ラッセル?アインシュタイン宣言」を発表し、世界の科学者が署名して核兵器による人类の危机を诉えました。それから64年を経た今、世界中で自国第一主义が幅を利かせ、曲がりなりにも核军拡竞争に歯止めを掛けてきた中距离核戦力(滨狈贵)全廃条约が无効となるなど、再び世界に危机が迫っていると言わざるを得ません。
さらに、贫困や飢饿、地球环境问题など、世界はさまざまな难问に直面しています。皆さんには広岛大学で身に着けた学识や技术を力に、决してあきらめることなく、几多の困难に立ち向かっていただきたいと愿っています。
あらためまして、令和という新しい时代の幕开けに门出される皆さんの前途が、梦と希望に満ちたものとなることを祈念いたしまして、私からのはなむけの言叶といたします。
令和元(2019)年9月20日
広岛大学长 越智光夫