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【開催報告】【2022.01.29】広岛大学インキュベーション研究拠点「教育ヴィジョン研究センター(贰痴搁滨)」は第105回定例オンラインセミナー「授業研究を研究する(9) 異なる専門の研究者が共通フィールド(場)にどのように関わるか?」を開催しました

は,広岛大学インキュベーション研究拠点「教育ヴィジョン研究センター(贰痴搁滨)」は,教師教育?授業研究ユニットの活動の一環として,2022年1月29日(土)に,第105回定例オンラインセミナー「授業研究を研究する(9) 異なる専門の研究者が共通フィールド(場)にどのように関わるか?」を開催しました。大学院生や学校教員を中心に74名の皆様にご参加いただきました。

「授業研究を軸に教師教育を改革する」シリーズは,日本の授業研究と世界のLesson Studyとの交差点を探りながら,授業研究に基づく教師教育について研究できる国際共同研究プラットフォームの構築を目指す企画です。その契機として,2019-2020年の研究成果をKim, J., Yoshida, N., Iwata, S., Kawaguchi, H. (Eds.). (2021). Lesson Study-based Teacher Education: The Potential of the Japanese Approach in Global Settings. New York, NY: Routledgeにまとめて出版しました。さらに,同書刊行に合わせてこれまで計8回のセミナーを,2020年度教育学部共同研究プロジェクト(研究代表者:金鍾成)の支援も受けて開催してきました。2021年度も引き続き教育学部共同研究プロジェクト(研究代表者:金鍾成)の支援を得て,日本の授業研究と世界のLesson Studyとの相互作用の解明に取り組んでいます。

シリーズ第9回となる本セミナーは,授业研究における教师教育者?研究者の役割に着目することで,授业研究をどのように理解し,どのように関わっているのか,を明らかにすることに焦点を当てました。そのため,异なる専门领域を持つ研究者が共通のフィールドで授业研究をすることで,どのような省察が得られるのか,そしてどのような课题が明らかになるのかについて,3名の报告者が共通の授业研究に参加した事例に関して报告が行われました。

本セミナーの趣旨説明を行う金准教授

吉田高等学校との関わりを説明する吉田准教授

はじめに,司会の(広岛大学)より,本セミナーの趣旨が説明されました。本セミナーシリーズでは,授业研究における教师教育者?研究者の関わり方に対する対话の不足,それによる授业研究そのものを研究?省察の対象とする机会と文化の不在が问题状况としてあること。そのため,授业研究について语り合う目的について,授业研究(=教师教育実践)を授业研究すること(実践的意义),そして授业研究を研究すること(学问的な意义)が説明されました。この问题意识に対して本セミナーでは,「异なる専门の研究者は,共通フィールド(场)にどのように関わるか」を主要な问いとして设定し,异なる専门分野の3人の话题提供者が共通の授业研究に参加した事例を手がかりに,授业研究において何に着目していたのかを议论することが説明されました。そうすることで共通フィールド(场)に异なる専门の研究者が関わることの意味に迫るという论点がセミナーの参加者全体で确认されました。

次に,(広岛大学)が本セミナーにおける共通フィールド(场)として设定をし,协力をいただいた広岛県立吉田高等学校との関わりの経纬?文脉を説明しました。広岛県教育委员会と広岛大学大学院との包括协定という枠组みと同时に,报告者である吉田准教授と研究主任である小泽圭介氏との2014年から(小泽氏の前任校以来)の研究的つながりを直接的な契机として、吉田高校との関わりを持っていることが説明されました。吉田高校では2019年度に设置された「探究科」における「系统的?横断的な学びによる『探究』の深化」に重点が置かれ,授业研究を中心に学校运営协议会や2021年度広岛大学教育学部高等学校教员のための指导力向上セミナーでの报告などを通して,その取组が报告,深化されてきたことが述べられました。また,吉田准教授?岩田准教授?川口准教授の叁名が参観を行った2021年11月9日の同校における公开授业研究会の二つの授业,芸术科(书道Ⅰ)と物理基础のそれぞれの授业概要について,大学院生(书道:泽田百花氏?藤井翔太氏?明月氏?安藤和久氏,物理基础:曾玉儒氏?俵龙太朗氏?藤原由佳氏)が作成した动画にて报告されました。

自身の授业研究への「関わり」について説明する岩田准教授

言语に着目した授业研究について説明する川口准教授

次に,(広島大学)から「体育科教育学と教師教育者の視点から見る」と題して発表が行われました。はじめに自身の授業研究への「関わり」として,体育教師の学びの持続性と専門性開発を授業研究の中心的な目的と置いていることから,保健体育科の授業研究における指導助言者(knowledgeable others)としての「関わり」を授業研究の中心としつつも,協議会自体のファシリテートなど,指導助言者(=教師教育者)としての「関わり」へと自身のスタンスを拡張しつつあることが述べられました。また,日本やオランダの研究を参考に,新しい視点の提供や研究授業に関する分析?解釈に力点をおいて取り組むという仲介者(Broker)としての役割を果たすことが,自身の授業研究への「関わり」であることが省察されました。そのため,岩田准教授からは吉田高校での芸術科(書道Ⅰ)の授業研究では,授業の空間をどのように構成しているのかということに注目しつつも,生徒の学習の様子と教師の行動を中心に観察していたことが報告されました。一方でその後の協議会においては,他者の実践共同体への配慮といった「関わり」の限界性に葛藤し,「批判的省察」まで深化することができなかったことが述べられました。またその理由には,共に授業研究に参与した研究者間での「授業研究」の射程や協議会での姿勢の差異があったことにも言及され,自身の実践共同体への活用や授業の見方も含め,授業研究そのものを省察する機会として「研究共同体」が存在していることの重要性について報告がなされました。

(広岛大学)からは「社会科教育学とシティズンシップ教育の视点から见る」と题して発表が行われました。まず,通常の授业研究において,初等?中等の社会科研究授业の指导助言者として関わる「授业のための研究」を中心としながらも,授业研究を民主的な専门性开発の场として捉え民主的な公共圏を促进するために,実践に埋め込まれた教师の知识の可视化や社会科と教师の役割に批判的な考察を促すことを意识してきたことが述べられました。吉田高校での物理基础の授业研究では,教师と生徒の発言内容に注目することで授业事実を确定し,目标に则した上での课题を指摘すること(内在的批判)と,目标そのものを批判的に考察すること(外在的批判)を意识して临んだこと,そこで生徒の学习の様子と教师の行动を中心に観察していたことが述べられました。具体的には授业研究と事后の协议会への参加を通して,共に授业研究に参与した研究者间の「授业」そのものの射程の违いと「授业」の切り取り方に违いがあることに気づき,教室内の実践を中心に「言语」(発言)に着目して授业を记録していた自身の见方が省察されたことが説明されました。さらに,授业研究を谁に対して行うか,指导助言者としてどのようなスタンスを取るかという点においても研究者间での差异が确认でき,「授业」をどのように捉えるか,指导助言者は授业研究において教师に寄り添い続ける「パートナー」となるべきなのか,あるいはいずれいなくなるべき「他者」なのか,といった论点が深まったことが报告されました。さらに今后の検讨课题として,学校や教师に対するメリットを考えること,多様な専门性をいかに调停するのかということ,教师教育者间の権力関係に敏感になる必要性があることが主张されました。

最后に,吉田成章准教授(広岛大学)から「地域と协働する学校カリキュラムの视点から见る」と题して発表が行われました。発表では川口准教授,岩田准教授の発表を受けて,以下の4点が述べられました。①授业研究に対するスタンスの取り方ついては,指导助言者としてその场で何を感じ,何を思ったのかという思考の瞬発力を锻えてきたというよりは,「授业记録(フィールドノート/発话记録)」をとり,授业后に分析をかけていくことを重视してきたという违いが述べられました。加えて,②毎回の授业分析においては,校内研修の取り组みや学校の文脉を知ったうえで,「授业者の働きかけを生徒はどう思ったのか」という视点を持ちながら分析をかけていくスタイルを磨いてきたことが振り返られました。③研究者养成に関わっての取り组みを振り返ると,校内研修の取り组みをより学校外に开いていくことや指导している院生がいずれは自分の力で学校とかかわれるようにしていくことを念头においていることが补足説明されました。④岩田准教授?川口准教授両者の授业の见方との类似点?相违点については,授业协议会への関わり方のスタンスに违いはあるが,それぞれの研究専门性や研究の射程を基盘にしながら授业研究へ関わろうとする授业の见方自体は共通していることが述べられました。

授业研究への3名の立ち位置について质问する鹿毛氏

介入研究者としての役割について质问をする山住氏

以上の発表を受けて,指定讨论者の鹿毛雅治氏(庆应义塾大学)からは,発表者へ2つの问いが提示されました。1つ目は,授业研究に関わる私とは何かということが常に问われる中で,「谁が(研究者が/教师が),何のために,谁のために授业研究をするのか」に研究者としていかに応えるのかという问い、2つ目は,「そもそも指导助言者とは何者なのか。また,教师教育者とは何者なのか」を研究者が反省的に问うているのかという问题関心のもとに,「教师教育者」と自らの立场を表明する际に,「教师教育者」に含みうる自分なりの意味や意図は何かという问いが提示されました。これらの2つの问いをめぐる授业研究への取り组みと自身の立场については,异种専门家同士で関わる中で问题解决をしていく関係性の构筑を目指すこと(「コンサルテーション」),そして「授业という営み」「教育という営み」そのものに対する见识を深めていかなければいけないことという问题意识が基盘にあることが述べられました。

その后,各话题提供者の先生から鹿毛氏の问いかけへ応答がありました。岩田准教授からは,自身の研究者キャリアの过程で,「研究者」とは名乗らず自分を表す立场はいったい何かということを考えていた时期に,オランダで「教师教育者」という言叶に出会った経験が述べられました。オランダの文脉で语られる「教师教育者」という言叶をそのまま日本の文脉に当てはめることには留意しつつも,今后日本における「教师教育者」の定义を考察していく必要があることが述べられました。また,「教师教育者」という表し方ではなく,「协働支援者」としての立场を新たなフェーズとして描き出そうとしていることが述べられました。川口准教授からは,「民主主义教育としての学校という场はどうしたら実现できるのか」という问いを,授业研究を通して考えていきたいという问题意识の根干が述べられました。また,「教师教育者」という言叶の使い方については,権力的なニュアンスではなく,教师とともに知识をつくっていくための専门家として実践にかかわるという自制を込めて使っていることが述べられました。吉田准教授からは,「教育方法论はあっても教育方法学ではないのでは」という鹿毛准教授の意见やこれまでの授业研究を振り返る中で,授业研究において研究者の用いる研究方法论の検讨があまりなされてきていないということが振り返られました。自身のドイツでの在外研究の経験を踏まえながら,授业研究における研究者の研究スタイルに,授业についての分厚い记述に向き合うことや研究で使われる言叶で授业についての共同解釈を行ったり意味を见出したりすることを通して授业が価値づけられていく过程が含まれることを学んできたと述べられました。また,「目の前の子どもとは谁か」ということにこだわって授业研究を考えながら,今后も教育的瞬间をつぶさにみていきたいということが述べられました。

続いて指定讨论者の山住胜広氏(関西大学)からは,「形成的な介入研究者の役割とは何か」と题して,活动理论の枠组みと3人の话题提供者の授业研究への関わり方を结びつけて考察がなされました。また,実践を理论に结びつけることに向かう「研究者の主体的な态度営み」について,エンゲストロームの「実践を理论に结びつける」方法论や「介入」概念を手がかりにしながら,质问やコメントが示されました。

岩田准教授へは,研究者のアイデンティティ形成の中で,「仲介者」としての役割を见出されていたが,具体的には「なに」と「なに」を仲介することを想定しているのかという质问が投げかけられました。川口准教授へは,シティズンシップ教育の文脉で「子どもの声」を反映しようとするとはどういう意図があるのかいう质问が投げかけられました。また,子どもの声を大切にしようとするスタンスが,エージェンシー概念に新しい见方を促すのではないかという方法论の可能性が见いだされた。吉田へは,拡张理论における「政治的-伦理的次元」と授业「による」研究というスタンスを结びつけて考える提案がなされました。また,「政治的-伦理的次元」と学校改革とをつなげていく授业研究の方向性を考えられないのかという问いかけがなされました。

その后,各话题提供者から山住氏への応答がありました。岩田からは,山住氏から出された「仲介」とは具体的に何をさすのかという质问に対し応答がなされました。「仲介」とは,教师を中心において授业を考える中で,教师―子ども,教师―明日の実践を変える教材,教师―他の教师,教师―行政関係者といった多様な関係を仲介する研究者の役割を想定していることが述べられました。仲介者としての研究者は,実践を理论と结びつけながら授业を対象化することや,改善の余地を実践者と伴に考えていくことができる存在であることが述べられました。川口准教授からは,吉田高校での物理の事后协议で「子どもの声」にかかわってコメントした理由として,教科教育文脉にいる自分は「教师」に寄り添い,「先生方がやりたい実践はいかに実现できるのか」を强调して考えてきたというこれまでの授业研究のスタイルが振り返られました。また,自身のこれまでの授业研究では,フィールドでの多様な声を闻き逃していたことが反省され,できるだけ子どもの声を教师に反映することを意识してきたことが述べられました。また,研究者として,エージェントとして授业研究における「対等」関係をどこまで切り结べるのか,子どもにどこまで関係を求めるのかを考えていきたいということが述べられました。吉田准教授からは,授业研究における「政治的-伦理的次元」について,学习集団の见方を基に「全员参加」をどう考えるかという事例に沿いながら応答がなされました。研究授业で见た「全员参加」をめぐる事例を示しながら,目の前にいる子どもだけではなく,「谁もが出入りできる空间」/「民主的な空间」を「政治的-伦理的な」次元として考えることができるのではないかということが応答の中で提示されました。

また,ウェビナーの蚕&补尘辫;础机能を活用して行われた质疑応答では,「授业研究という场を,指导?批评の场から,対话する场へとパラダイムシフトしていくことについて今后どのように考えるか」といった质问や「大学の授业でも,教科の异なる教师同士が授业研究への関心を深めていけるような授业が设定されることを今后期待したい」といった意见も出されました。前者の质问については,まず吉田から,校内研修という场を今すぐ対话の场にしていくことは难しいが,今の段阶では,学校运営协议会といったような大きな授业研究の文脉では子どもとともに対话をする场が设定されればいいと思っているとの応答がなされました。また,川口准教授からは,全体の方向性として「対话」を目指すのは肯定できる一方で,研究者が校内研修といった场で理论を提出するのは,研究者と実践者の共同のプラットフォームを形成するための足场架けとして提示している侧面もあるとの応答がなされました。

今后も贰痴搁滨では,教师教育?授业研究ユニットを中心に,授业研究を轴に教师教育を変革するための方略を検讨してまいります。是非,贰痴搁滨のセミナーシリーズに幅広いご関心をお寄せいただき,今后とも研究?実践をご一绪させていただければ幸いです。
 
当日の様子はをご覧ください。

イベント一覧についてはをご覧ください。

 

【问い合わせ先】

広島大学教育ヴィジョン研究センター(EVRI) 事務室

E-Mail:evri-info(AT)hiroshima-u.ac.jp

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