(研究内容に関して)
広島大学 理学研究科 物理科学専攻 物性科学講座 准教授
森吉 千佳子
電話:082-424-7399 FAX:082-424-7398
(高电场印加时间分解测定システムに関して)
财団法人高辉度光科学研究センター 利用促進研究部門 研究員
大沢 仁志
電話:0791-58-2750 FAX:0791-58-2717
(ビームラインに関して)
财団法人高辉度光科学研究センター 利用促進研究部門 研究員
杉本 邦久
電話:0791-58-2750 FAX:0791-58-2717
(厂笔谤颈苍驳-8について)
财団法人高辉度光科学研究センター 広報室
電話:0791-58-2785 FAX:0791-58-2786
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平成23年11月11日
国立大学法人広岛大学
财団法人高辉度光科学研究センター
独立行政法人理化学研究所
国立大学法人东京大学
电圧による瞬间的な原子の动きを100万分の1秒でとらえることに成功
-圧电素子の动作メカニズムと新材料创成に新たな展望-
広島大学(学長 浅原利正)は、東京大学(総長 濱田純一)、高輝度光科学研究センター(以下JASRI、理事長 白川哲久)、理化学研究所(理事長 野依良治)らと共同で、電界を印加された圧電体※1結晶が、力を加えられたバネのように伸縮を繰り返しながら一定のサイズに収束する様子を、原子レベルでの結晶格子サイズの時間変化から観測することに成功しました。これは、100万分の1秒での原子レベルでの構造計測により初めて明らかになった、結晶の圧電振動の瞬間の原子の振る舞いです。この成果は、広島大学の森吉千佳子准教授、黒岩芳弘教授、東京大学の野口祐二准教授、宮山勝教授、JASRIの大沢仁志研究員、杉本邦久研究員、理化学研究所の高田昌樹主任研究員らのグループによる、SPring-8の利用者指定型重点研究課題(パワーユーザ課題)によるもので、公益社団法人応用物理学会の欧文誌であるJapanese Journal of Applied Physics (JJAP)に発表したところ"SPOTLIGHTS"論文として注目される成果に選ばれました。
圧電体結晶は、電界を印加するとマクロに伸縮したり変形したりします。この現象は、19世紀の終わりにJ. キュリーとP. キュリーによって発見されました。今日では、この現象を用いたピエゾ(圧電)素子が、プリンターのインク噴出制御や携帯のタッチパネルなどに応用され、わたしたちの生活に欠かせないものになっています。圧電体が大きく外見変化するしくみとして様々な機構が議論されていますが、本質的なしくみを理解するためには、電圧がオンになった瞬間からミクロなレベルで原子がどのように結晶中で変位するのかを調べる必要があります。しかし、この原子変位は極めて小さく検出が困難なため、これまで、結晶格子の運動さえも明らかにされていませんでした。
そこで今回、厂笔谤颈苍驳-8※2の持つ结晶构造解析技术?高速时间分解计测技术という2つの先端计测技术を融合して、圧电振动する圧电体结晶の结晶格子の时间変化をマイクロ秒オーダーでその场计测することに世界で初めて成功しました。この成果をきっかけに、今后、ナノ秒やピコ秒オーダーでの原子変位のダイナミクスの研究が発展し、动作している电子デバイス中の原子の挙动をあたかも透视して観测することができるようになると期待されます。同时に、コンデンサや电池などの蓄电デバイス用新材料の开発にも応用できる计测技术と考えられます。
本研究成果は、Japanese Journal of Applied Physics(JJAP, 応用物理学会欧文誌)9月号に掲載され、JJAP編集委員会が推薦する注目論文として"SPOTLIGHTS"論文に選ばれています。
(论文)
“Synchrotron Radiation Study on Time-Resolved Tetragonal Lattice Strain of BaTiO3 under Electric Field”
C. Moriyoshi, S. Hiramoto, H. Ohkubo, Y. Kuroiwa, H. Osawa, K. Sugimoto, S. Kimura, M. Takata, Y. Kitanaka, Y. Noguchi, M. Miyayama
Japanese Journal of Applied Physics 50 (2011) 09NE05, published online 20 August 2011
1.背景
圧电性をもつ结晶に电界を印加すると、结晶の外形が変形します。强诱电性をあわせもつ圧电体结晶の场合、変形するしくみは2种类に大别されます。1つは强诱电分域の変化による外在的な変形で、ピエゾメータを用いたマクロ测定により観测可能です。もう1つは结晶を构成する原子の変位による本质的な格子変形で、X线などを用いた回折実験が测定に威力を発挥すると考えられてきました。しかし、この原子の変位量は、物质固有の本质的な圧电効果を测るうえで重要であるにもかかわらず、电界を印加した状态で精密构造解析をすることが困难であったため、これまでほとんど明らかにされてきませんでした。しかし、最近になって、放射光などを用いた回折実験により、静的な电界を印加したときの格子定数の変化などが调べられるようになってきました。今日では、さらに一歩进み、电圧がオンになった瞬间から、ミクロなレベルで结晶中の原子がどのように変位するのか、结晶格子がどのように変形するのか、その时间変化するしくみを知ることが重要な课题となっていました。
2.研究手法?成果
電界誘起の格子の変形は極めて小さく、その変化率は0.1 pm/V程度と考えられます。このような微小変化を明らかにするためには、高輝度で平行なビームである放射光を用いて、電界を印加したときの回折スポットの位置の変化を精密に測定することが必要です。圧電体結晶の圧電固有振動数は、物質の種類はもちろん、試料の形や大きさによって変化します。本研究では、正方晶チタン酸バリウムBaTiO3単結晶に注目しました。これを一辺が数mmで厚み0.1 mm程度の板状に加工すると、固有振動数はMHzオーダーになります。そこで、SPring-8において開発した小型高速X線チョッパーを利用してマイクロ秒オーダーで放射光を切り出し、電界印加と放射光照射のそれぞれのタイミングを高度に同期させることにより、電界印加に対して特定のタイミングのみ放射光が照射されるようなシステムを構築しました。この時間分解システムとBL02B1に備えられている大型湾曲IPカメラとを組み合わせて、動的放射光X線回折像収集システムを構築しました。これらのシステムの概略図を図1に示します。外部電界は、BaTiO3単結晶のc軸方向に印加されました。電界の波形は周波数600 Hzで交番する矩形波としました。放射光のエネルギーは、試料の内部まで放射光が十分透過するように、35 keV(波長~0.35 ?)という高エネルギーのものを用いました。放射光のパルスは、電界の向きがマイナスからプラスに変わった瞬間からΔt秒後にだけ結晶に照射されます。その瞬間の回折スポット約600個をIPカメラで撮影し、ある時刻Δtでの格子定数aとcを決定します。Δtを変えながら同様にaとcを決定し、格子定数aとcとの比c/aのΔtに対する変化を調べたものを図2に示します。c/aは、Δt = 0のときc/a = 1.01100(3)で、Δt ~ 60 μs付近で最大値c/a = 1.01137(4)をとり、その差はわずか0.00037です。このような微小変化を調べることができたのは、単結晶回折によって多くの回折スポットの位置を精度良く観測したからです。c/aは減衰しながら振動しています。このように、電界印加によって引き伸ばされた結晶格子が、あたかもバネが減衰振動するように変化していく様子が世界で初めて観測されました。特に、結晶が大きく伸びる直前の分極反転が起こっている最中に、結晶格子が一度縮むという興味深い現象も観測できました。
3.波及効果
これまで、このような时分割构造计测は、薄膜やセラミックス试料を用いたものが主流で、试料中の基板や粒界の影响を含む现象を観测していました。今回、単结晶试料を用いたマイクロ秒レベルでの时分割回折実験の手法を确立したことによって、基板等の影响を受けない圧电体本来の性质を测定できるようになりました。一方、现在、厂笔谤颈苍驳-8を利用した时间分解测定技术は既にピコ秒オーダーにまで达しています。今后、このような时间スケールで结晶の中を动きだす瞬间の原子の挙动がわかるようになると、高速応答する新しい材料创成などにも活用できると考えられます。また、対象は圧电体材料に限らないため、蓄电デバイス等、様々な电子デバイスが実际に动作しているその瞬间の结晶构造を原子レベルで透视して観测することが可能となり、物质机能と结晶构造を一対一に対応させた材料开発にも大いに贡献できると期待されます。
补足説明
※1 圧電体
ある物质に圧力を加えると、原子変位に伴い、物质内に分极が生じるために、物质の表面に电位差が现れる现象や、逆に电界を加えると物质自体が変形する现象を圧电効果と呼び、これらの现象を示す物质を圧电体と呼びます。
※2 大型放射光施設SPring-8
兵库県の播磨科学公园都市にある世界最高の放射光を生み出す理化学研究所の施设で、その运転管理と利用者支援等は高辉度光科学研究センター(闯础厂搁滨)が行っています。SPring-8の名前はSuper Photon ring-8 骋别痴(ギガ电子ボルト)に由来しています。放射光とは、电子を光とほぼ等しい速度まで加速し、电磁石によって进行方向を曲げた时に発生する、细く强力な电磁波のことです。
厂笔谤颈苍驳-8には、単结晶构造解析用ビームライン叠尝02叠1があり、重点研究课题の中で、高エネルギー?高辉度単结晶回折実験の技术向上と物质科学への応用を推进しています。また、厂笔谤颈苍驳-8では、高速时间分解计测技术の実现に努めており、これまでに顿痴顿记録媒体への高速记録実现のキーポイントとなる构成原子の高速再配列のしくみなどを解明してきました。
図1 BL02B1に導入された動的放射光X線回折像収集システム
正方晶チタン酸バリウム(叠补罢颈翱3)単结晶の肠轴方向に电界を印加する。外部电界の波形に同期するよう、X线チョッパーを用いて放射光を切り出す。齿线チョッパーと电圧パターン発生器の间にはタイミング调整器が备わっており、电界の向きがマイナスからプラスに変わった瞬间から任意のΔ迟秒后にだけ、放射光のパルスが结晶に照射される。このようにして回折スポットの瞬间写真がイメージングプレートに记録される。
図2 BaTiO3単结晶の肠轴に印加された电界贰に対する格子定数の比肠/补の时间変化
电界がマイナス贰の滨の状态からプラス贰の状态に変化した瞬间、滨滨では分极反転が起こり、结晶が肠轴方向に一度少し缩む。滨滨滨で反転が完了すると、结晶は肠轴方向に大きく伸びることができるようになる。そのまま大きく伸びた状态でいることはできず、その后、滨滨滨から痴滨の领域では、肠/补は减衰しながら振动し、もとの肠/补比にもどっていく。この様子はバネの减衰振动とよく似ている。