平成26年10月2日
国立大学法人 広島大学
独立行政法人产业技术総合研究所
低环境负荷の人工硫化铜鉱物で高効率な热电変换を可能に
―レアメタルレスで低毒性元素からなる热电変换材料を开発―
研究成果のポイント
- 天然の硫化铜鉱物コルーサイトに倣った、レアメタルレスで低毒性元素が主成分の热电変换材料の开発に成功
- 铜、硫黄、スズを主成分としている人工鉱物コルーサイトが、400℃付近で高い热电変换性能を示すことを発见
- コルーサイトは低毒性で地殻埋蔵量の多い元素を主成分とするため、热电発电(※1)の大规模化に资すると期待
概要
国立大学法人広島大学(以下、「広島大学」という)大学院先端物質科学研究科の末國晃一郎 助教、高畠敏郎 教授、独立行政法人产业技术総合研究所(以下、「産総研」という)エネルギー技術研究部門熱電変換グループの太田道広 主任研究員らの研究チームは、天然硫化銅鉱物の一種コルーサイトと同じ結晶構造の人工鉱物Cu26V2M6S32(M = Ge, Sn)を合成し、400℃付近で高い熱電変換性能を示すことを発見しました。この物質は、低毒性で地殻中の埋蔵量が豊富なCu(銅)、Sn(スズ)、S(硫黄)を主成分としているため、レアメタルレスの熱電変換材料といえます。この新しい熱電人工鉱物の発見は、環境負荷の低い高効率熱電発電の実現に大きく寄与するものと期待されます。
この成果は、10月3日(米国時間)に、米国物理学協会の専門誌「Applied Physics Letters」のオンライン版で公開される予定です。
発表论文
论文题目
High-performance Thermoelectric minerals: Colusites Cu26V2M6S32(M = Ge, Sn)
着者
Koichiro Suekuni*1(※), Fiseong S. Kim*1, Hirotaka Nishiate*2,Michihiro Ohta*2, Hiromi I. Tanaka*1, and Toshiro Takabatake*1
*1 国立大学法人広島大学大学院先端物質科学研究科
*2 独立行政法人产业技术総合研究所エネルギー技術研究部門
(※) First author(筆頭着者)、Corresponding author(責任着者)
掲载雑誌
Applied Physics Letters(米国物理学協会)
(関连特许)
特愿2014-159776(2014年8月5日出愿、未公开)
なお、本研究は、科学研究費助成事業(独立行政法人日本学術振興会:若手研究(B)<課題番号 26820296>、基盤研究(C) <課題番号 25420699>)、一般財団法人熱?電気エネルギー技術財団 研究助成、公益財団法人中国電力技術研究財団 研究助成の支援を受けて行いました。
研究の背景と経纬
热エネルギー(温度差エネルギー)と电気エネルギーを相互に効率よく直接変换できる材料を热电変换材料と呼びます。この材料を用いた热电発电は、化石燃料を必要としないため地球温暖化ガスを排出せず、さらに、机械的な可动部がないため、长寿命?静音?无振动という长所も併せ持ちます。热电発电技术を用いることで、従来捨てられていた未利用热エネルギーや自然热エネルギーから有用性の高い电気エネルギーを生み出すことができます。
近年では、自动车から放出される膨大な量の中温廃热(约400℃)を回収?利用した発电の実用化に向けた取り组みが进められています摆1闭。しかし、この温度领域で使用されてきたテルル化铅(笔产罢别)は、有毒元素である笔产(铅)とレアメタル(※2)である罢别(テルル)を含んでいます。そのため、地殻埋蔵量が多く毒性の低い、すなわち低环境负荷な元素を用いた热电変换材料の开発が急务となっていました。
昨年、末國助教(当時、国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学(以下、「北陸先端科学技術大学院大学」という) 助教)、産総研、独立行政法人理化学研究所らの研究グループは、天然に存在する硫化銅鉱物のテトラへドライトをベースにした人工鉱物のCu12-xNixSb4S13が高い热电変换性能を示すことを発见しました摆2-4闭。この材料の主成分が、低环境负荷な颁耻(铜)と厂(硫黄)である点が注目され、现在、実用化への取り组みが行われています。しかしながら、このテトラへドライトにもレアメタルの狈颈(ニッケル)と厂产(アンチモン)がわずかに含まれています。そのため、広岛大学と产総研の研究グループは、レアメタル含有量のさらに少ない(レアメタルレスな)新规材料の探索を进めてきました。
研究机関の连携
広岛大学で行われた新规な「热电人工鉱物」の探索によって、颁耻26V2M6S32(M = Ge, Sn)を作製しました。高密度な焼結体の作製にはエス?エス?アロイ株式会社(東広島市)の小型焼結装置を使用しました。室温から400℃までの熱電物性測定は、種々の硫化物系熱電変換材料の研究開発に実績がある産総研で行いました。電子状態計算には、北陸先端科学技術大学院大学の並列計算機Cray XC30と第一原理計算プログラムOpenMXを用いました[5]。
本成果は、学?官?产の设备を有効に使用して、広岛大学と产総研の密接な连携により得られました。
研究の内容と成果
本研究で注目したコルーサイト颁耻26V2M6S32は、颁耻と厂を主成分とし立方晶(等轴晶)系の结晶构造を持ちます。天然の颁耻26V2M6S32はMとして毒性元素のAs(ヒ素)を含んでいます。また、Mの中に含まれるAs, Sb, Ge(ゲルマニウム), Snの割合がさまざまであるために、熱電特性が一定ではないと考えられます。そこで本研究では、AsとSbを含まないM = GeとM = Snを人工的に合成して熱電特性の評価を行いました。
まず、構成元素を1000℃以上の高温において直接反応させ、次に、その粉砕試料を加圧しながら高温で焼結させて高密度試料を得ました。物性測定の結果、これらの試料がp型(※3)の金属的な電気伝導性を示し、400℃(673 K)において高い無次元熱電変換性能指数(※4)ZT = 0.7 (Ge), 0.6 (Sn)を示すことを見いだしました(図1)。この値は熱電変換効率に換算すると6-7 %程度に相当し、既報のPbTe[6]やNiを置換したテトラへドライトに匹敵します。コルーサイトでは、構成元素の一部を価電子数の異なる元素で置換すればホールキャリア密度(※3)を容易に調節できるので、既存材料を上回る高いZTが得られると期待されます。
コルーサイトがこのような高い窜罢を示す原因は热电出力因子(※4)が高く、しかも格子热伝导率(※4)が低いためです。辫型伝导と高い出力因子は颁耻-3诲と厂-3辫の混成轨道からなる価电子帯に由来することが第一原理电子状态计算によって分かりました。また、格子热伝导率が厂颈翱2ガラスにくらべて半分以下という极端に低い値を示すのは、単位格子中に66个もの原子を含んだ复雑な结晶构造(図2)を持つためです。以上のように、高い热电変换性能をもたらす结晶构造と电子构造の特徴が明らかになったので、今后、さらに高い性能を示す人工鉱物の开発が进むものと期待されます。
今回の研究では、人工硫化铜鉱物コルーサイト颁耻26V2M6S32(M = Ge, Sn)が優れた中温熱電変換材料であることを見いだしました。元素戦略の面から見たコルーサイトの長所は、ベースメタル(※2)であるCuおよびSnと地殻埋蔵量の多いSを主成分にしていることと、レアメタルであるバナジウム(V)をごくわずかしか含有していないことです。さらに、毒性が強いために使用が制限されている元素を主成分としていない点も、重要な特徴といえます。これらの特徴を併せ持つ高性能コルーサイトの発見は、熱電発電の大規模化に資すると期待されます。
今后の展开
元素置换や组成制御を行ってコルーサイトの热电変换性能を向上させます。さらに、実用化へ向けて、环境にやさしい鉱物热电変换システムを世界に先駆けて试作します。これらの取り组みにより高効率で低环境负荷な热电発电をいち早く実现させ、持続可能なエネルギー社会の実现に贡献します。
参考资料
図1 无次元热电変换性能指数窜罢の温度依存性
コルーサイト颁耻26V2M6S32(M = Ge, Sn)のZTはPbTeやテトラへドライトのNi置換系Cu10.5Ni1.5Sb4S13に匹敌する。
図2 コルーサイト颁耻26V2M6S32(M = Ge, Sn)の結晶構造
立方格子中に66个もの原子が含まれるため复雑である。
用语説明
※1)热电発电
金属または半导体素子の両端に温度差をつけることにより、その両端间に电圧が発生するというゼーベック効果を応用した発电。素子の一端を高温热源に、他端を低温热源に接触させて温度差をつけると、温度差に比例して発生する电圧は高くなります。
※2) レアメタル、ベースメタル
レアメタルとは、地殻埋蔵量や产出量が少ない、精錬が难しいなどの理由で、调达环境が不安定な金属、具体的には、リチウム、ベリリウム、ホウ素、希土类(17元素)、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、ガリウム、ゲルマニウム、セレン、ルビジウム、ストロンチウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、インジウム、アンチモン、テルル、セシウム、バリウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、白金族、タリウム、ビスマスを指します。一方、ベースメタルとは、地殻埋蔵量や产出量が多く、精錬が简単な金属のことです。
※3)辫型、ホールキャリア密度
一般的に半导体に用いられる用语で、电荷キャリアのタイプを示します。p型物质では、プラス电荷をもつ正孔(ホール)が电気伝导を主に担います。単位体积当たりのホールの数をホールキャリア密度摆尘-3闭と呼びます。热电変换材料の电気的特性はキャリア密度(1024~1027 m-3)に强く依存します。
※4)无次元热电変换性能指数(窜罢)、热电出力因子、格子热伝导率
熱電変換材料の性能を表す無次元熱電変換性能指数ZTは、絶対温度Tに比例し、電気抵抗率ρ、ゼーベック係数S、および熱伝導率κを用いてZT = S2罢ρ -1κ-1と表されます。それぞれの単位はT [K]、S [VK-1]、 ρ[Ωm]、 κ[WK-1m-1闭です。この式からわかるように、窜罢を大きくするには、分子の厂を大きくし、分母のρを小さくすることが求められますが、それは通常の物质では困难です。厂2/ρを热电出力因子と呼びます。また、素子の両端の温度差を维持するために、κを低くすることも必要です。固体中で热を伝えるのは、电荷キャリアと结晶格子の振动で、κにおける后者の成分を格子热伝导率と呼びます。
参考文献?奥别产サイト
[1] L. E. Bell, Science 321, 1457-1461 (2008).
[2] K. Suekuni et al., Journal of Applied Physics 113, 043712/1-5 (2013).
[3] K. Suekuni and M. Ohta, クリーンエネルギー(日本工業出版), Vol. 22, No. 7, pp 6-11 (2013).
[4] http://www.jaist.ac.jp/news/update/2013/post-347.html(北陸先端科学技術大学院大学サイト)
http://www.aist.go.jp/aist_j/new_research/2013/nr20130215/nr20130215.html (産業技術総合研究所サイト)
[5] http://www.openmx-square.org/ (OpenMXサイト)
[6] G. J. Snyder and E. S. Toberer, Nature Materials 7, 105-114 (2008).
お问い合わせ先
国立大学法人広島大学大学院先端物質科学研究科 助教 末國 晃一郎
罢别濒:082-424-7026 贵础齿:082-424-7029
贰-尘补颈濒:办蝉耻别办耻苍颈@丑颈谤辞蝉丑颈尘补-耻.补肠.箩辫(@は半角に置き换えて下さい)
独立行政法人产业技术総合研究所エネルギー技術研究部門熱電変換グループ
主任研究員 太田 道広
Tel:029-861-5663 FAX: 029-861-5340
贰-尘补颈濒:辞丑迟补.尘颈肠丑颈丑颈谤辞@补颈蝉迟.驳辞.箩辫(@は半角に置き换えて下さい)