広島大学 学術?社会産学連携室広報グループ
楠本 記章(クスモト ノリアキ)
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平成26年12月19日
サンゴの白化につながる共生藻の排出メカニズムを解明
概要
広島大学大学院生物圏科学研究科の小池一彦 准教授、藤瀬里紗さん(同研究科博士課程前期修了、現オーストラリアUniversity of Technology,Sydney)、水産総合研究センター西海区水産研究所の山下 洋 研究員らを中心とする研究チームは、サンゴからの共生藻の放出現象を解明しました。
サンゴは褐虫藻とよばれる藻类と共生していますが、水温上昇などが原因で褐虫藻を失い、その结果「白化」します。白化が进むとサンゴは死亡し、サンゴ礁の生态系の崩壊につながります。小池准教授らのグループは水槽実験によりサンゴから排出される褐虫藻の数や生理状态を调べました。その结果、サンゴは褐虫藻を消化して排出する机构をもともと持っていること、水温が上昇しサンゴ内に弱った褐虫藻が増えると、その消化?排出机构が加速されることを突き止めました。これは、サンゴにとって有害であるダメージを受けた褐虫藻を排除するための、サンゴの防御机构だと思われます。
また、水温上昇の期间が长引くと、弱った褐虫藻の増加にサンゴの消化?排出が追いつかなくなり、今度は褐虫藻を消化せず排出し始めることも判明しました。これはサンゴの「紧急的な処置」です。ただしその结果、サンゴからは徐々に健常な褐虫藻が减ってゆくと思われます。また、サンゴからの排出能力を上まわるほどに弱った褐虫藻が増えてしまうと、サンゴ内にダメージを受けた褐虫藻が増え、この「褐虫藻の全体密度の低下」と「弱った褐虫藻の蓄积」が、サンゴの白化につながっていると推测しています。
この研究成果は、12月10日付で米科学雑誌プロス?ワン誌(オンライン版)に掲载されました。
発表论文
着者 Lisa Fujise、 Hiroshi Yamashita、 Go Suzuki、 Kengo Sasaki、 Lawrence M. Liao、 Kazuhiko Koike*
* Corresponding author(責任着者)
论文题目 Moderate thermal stress causes active and immediate expulsion of photosynthetically damaged zooxanthellae (Symbiodinium) from corals
掲载雑誌 PlosOne DOI: 10.1371/journal.pone.0114321
研究の背景
サンゴには「褐虫藻」とよばれる微细藻が共生していますが、海水温の上昇などのストレスにより、サンゴは褐虫藻を失い、それがサンゴの白化につながります。地球温暖化にともなってサンゴの白化は深刻さを増しており、1950年以降、全世界の20%のサンゴ礁が消灭したとされます。
これまでサンゴからの褐虫藻の放出はさまざまな実験により确かめられてきましたが、その多くは、着しい高水温(32℃)で行われており、现场での状况を再现していませんでした。
そこで小池准教授らのグループは、冲縄などでよく白化が见られる「水温30℃、1週间」のストレスをサンゴに与え、サンゴから放出される褐虫藻を高精度に定量し、また、褐虫藻の状态をさまざまな机器を用いて详细に観察しました。
研究の内容
冲縄などで白化が顕着に観察されるミドリイシサンゴ2种を用い、まず非ストレス下(27℃)で饲育?驯致した后、徐々に水温を30℃まであげ、その状态を1週间维持しました。サンゴからの褐虫藻の放出量は27℃と30℃では大きく违いませんでしたが、30℃においては、サンゴから放出された褐虫藻の多くが消化されていました。一方、サンゴ组织内には消化された褐虫藻はほとんど见出されませんでした。このことから、サンゴは、水温ストレスによりダメージを受けた褐虫藻を消化して排出していることが示唆されました。
また、放出された褐虫藻には消化を受けていない细胞も见つかりますが、その光合成活性は水温の上昇とともに徐々に低下していきました。一方、サンゴ内には光合成能が低下した褐虫藻はほぼ存在していませんでした。これは、水温上昇によりダメージを受けた褐虫藻を、消化せずに、紧急的に排出する机构だと思われました。
これらの机构は、サンゴにとって有害である弱った褐虫藻を体内に溜めないための、サンゴの防卫机构だと思われます。しかし、この様にして水温上昇によって褐虫藻が弱り、それらが次々と排出されていくことによってサンゴの白化が引き越されると思われます。
波及効果と今后の展开
サンゴは、世界中のあらゆる生物の中で最も速く絶灭に向かっているとされます。サンゴ礁は海の热帯雨林ともよばれ、生物多様性の宝库です。このすばらしいサンゴ礁を残し保护していくには、その最大の减少要因である「サンゴの白化」のメカニズムを知る必要があります。
今回の成果においては、サンゴがある程度の水温上昇に自ら适応しようとする姿がみえますが、同时に、それが长期间に及ぶと白化につながる危険性も示唆されています。サンゴが変わりゆく地球环境に悬命に戦っている姿を知り、気候変动をもたらす人间が自らの责任を感じるときではないでしょうか。
広島大学大学院生物圏科学研究科 環境評価論講座
小池 一彦(コイケ カズヒコ)
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