判决文でも、论文でも、そこに示された法的思考を理解することは、その字面を理解することではない。一つ一つの言叶を理解しても何故その结论が得られるのかがわからないことがある。その法的思考の理解には前提となっている背景的知识でその脉络をとらえ行间を埋めることが暗に求められる。前提である背景的知识を头に浮かべさせ、それを念头において法的思考を追わせるトレーニングが必要である。
あらゆる専门领域において、そこでの研究等の成果を理解しようとすれば、その领域における、いわゆる「常识」がないと难しい、下手をするととんでもない误解をしてしまうことは、后から思い出しても赤面するような体験を通じて、身をもって知るところではないでしょうか(私だけですか????)。
その道の「常识」と言われる背景的知识は耳学问する方が早いようです。専门家に、素人でも感覚的に何となくわかるように説明してほしいとお愿いすることもしばしばです。そのおかげで、その研究の大発见たる由縁の一端を理解することができます。赏賛の拍手にも力が入ります。
しかし、このしのぎは自分があくまで第叁者的立场に立ちつづけることが许容の前提のようです。その道のプロを目指すのであれば、耳学问の机会はあっても、それに頼ってばかりとはいきません。他人の知识を使ったフリーライダー的な理解は、一时しのぎです。全体像を正确に把握するにも、事の本质をえぐり出して论ずるにも、不十分です。
自らの努力で「常识」を発见し把握することによって初めて、自らの论理的思考の前提に「常识」をおきつづけることができるのでしょう。问题解决に向けて论理を必死に展开しながら、その出発点を忘れた议论になってしまって、筋违いな结论に至るのも、同じことが原因かもしれません。论文や判决文の法的命题の射程を分析する场合に、问题意识や事案解决を前提とする制约を忘れるわけにはいかないでしょう。
かつて司法试験の勉强をしていた顷、勉强仲间と、基本书の当该问题の叙述部分には明记されていないが、その论理の渊源となっている基本原则や基础理论を见つけることがとても面白かったという记忆があります。当时最も定评があった宪法の基本书を、皆で最初から読み通しながら基本原理の具体的な展开を议论したことは鲜明に覚えています。现在、立宪主义や法原理机関などの言叶を使えるのも、そのおかげだと思います。
最近読んだ新书で、この専门的领域における背景的知识(心理学では「スキーマ」と言うそうです)の修得が学びにおいてきわめて重要なファクターであることを再认识しました。こどもの学びのプロセスで、こどもは、日常生活で起こる事象につき、その事象を説明するスキーマを粗野なもので思い込みにすぎなくても获得しようとし、误ったスキーマを获得したとしても、それと矛盾する事象と出くわしたときに正しいスキーマに修正するという「学び」ができるそうです。こどもは次々と新しい知识を得ていかなければならないため、それを可能にする知识のシステムの枠组みを作ることが优先されるのです。
システムアップのため、误った思い込みでもスキーマとして获得するので、それを修正する机会を逃してしまうと、误ったスキーマで事象を捕らえ、その本质を误解したままということもあるようです。なかなか怖いことですが、误りを修正することを前提とする学びの构造は一つの知恵でしょうから、これを活かさないのももったいないように思います。自分が使うスキーマと矛盾する事态に直面したときに素直に新たなスキーマを作り直すという修正に応じられるかどうか、そこがポイントのようです。
「间违いを犯す危険があっても『思い込み』を使って思考してしまうのは、未完成であれ、知识のシステムの
枠组みをとにかくつくるためだ。」
「システムをつくっていくためには、システムの外枠ができていることが大事だ。いったんシステムの外枠が
できれば、新しい要素は最初からシステムの中にすでに存在している要素と関係づけられながら学习されるこ
とになる。このようにして知识は、互いに関係づけられない断片がドネルケバブのようにどんどん贴り付けら
れるのではなく、要素が互いに関係づけられる形で、构造を持ちながらシステムとして成长していくのであ
る。」
「『思い込み』に导かれた思考のしかたは、误った思い込みを生む危険性もある。それでもなお、そのような
思考のしかたで素早く知识システムを立ち上げようとするのは、误りは后から修正すればよいことも子どもは
知っているからだ。」
「効率よい学びは确かに大事だ。しかし、それはシステムの枠组みを素早く立ち上げ、后でゆっくり修正する
という学びの过程の一部でしかない。効率よい学び自体が、熟达者のすぐれたパフォーマンスを可能にする
わけではないのである。」
(今井むつみ『学びとは何か―〈探求人〉になるために』岩波新书157~158页より)
次回は「不思议なこと」です。
