<研究に関すること>
大学院先进理工系科学研究科 准教授 志村 恭通
罢别濒:082-424-7026
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<広报?报道に関すること>
広島大学 広報室
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(*は半角@に置き换えてください)
大阪大学大学院生命機能研究科(理学研究科兼任)の木村真一 教授(自然科学研究機構分子科学研究所 クロスアポイントメント(当時))、広島大学大学院先进理工系科学研究科 の志村恭通 准教授、高畠敏郎 名誉教授らの研究グループは、重い電子系と呼ばれる物質群の一つであるセリウム?ロジウム?スズ合金(CeRhSn)の中で強く相互作用した電子が強い量子もつれ状態にあり、その寿命がプランキアン時間に従うことを初めて観測しました。
セリウム元素などのレアアース(希土类元素)※6を含む化合物では、希土类元素が有する局在的な开殻4蹿电子により、ネオジム磁石のような强力な永久磁石や、高辉度な蛍光剤などの様々な机能性が现れます。重い电子もその様々な机能性の一つで、局在4蹿电子と伝导电子との强い相互作用(近藤効果※7)により出现し、高温超伝导などの特殊な超伝导状态を引き出すため、现在の物性物理学の中心テーマである强相関物性の起源となることが知られています。他方で、电子や光の量子もつれを利用した量子コンピュータが近年开発され、既存の计算机の性能を超えた性能が期待されています。
今回、研究グループは、CeRhSnの重い電子の動的性質を赤外?テラヘルツ分光によって調べました。その結果、重い電子の寿命が量子力学的なゆらぎの時間である「プランキアン時間」で制限されていることを明らかにしました。この結果は、強く相互作用した重い電子が量子もつれ状態にあること(図1)を表しています。これにより、新奇超伝导などの物性物理学に残された量子临界现象への量子もつれの役割の解明が進むとともに、重い電子という新たな方法による量子コンピュータへつながることが期待されます。
本研究成果は、ネイチャー系国際科学誌「npj Quantum Materials」に、8月5日(火)15時(日本時間)に公開されました。
図1. CeRhSn上のもつれた重い電子の概念図
レアアース(希土類元素)は、身の回りにある強力な磁石であるネオジム磁石や高輝度な蛍光材料など、電子機器や自動車といった、現代社会を支えるデバイスに欠かせない材料です。その性質は、希土類元素が内包する局在的な開殻4f電子の振る舞いに強く由来しています。また、希土類化合物では、物質内部を伝導する電子の重さ(有効質量)が電子の静止質量と比べて数千倍にも増大する、「重い电子」が出現することが知られています。この重い電子も、4f電子の局在性が近藤効果により伝導電子に移されることに由来しています。このような物質系では、従来の理論で説明できない超伝導や巨大磁気応答などの興味深い量子臨界現象が現れるため、多くの研究者を魅了し盛んに研究されてきました。
量子临界现象が现れる条件として、絶対零度近くの极低温まで近藤効果が発达し続けることで、非フェルミ液体※8状态が出现することが知られています。この非フェルミ液体状态では、重い电子の寿命が量子力学の不确定性原理に基づいたゆらぎである「プランキアン时间」で制限されているという理论的な予测はあるものの、実験的には観测されていませんでした。
研究グループは、非フェルミ液体状态が比较的高温から出现するセリウム?ロジウム?スズ合金(颁别搁丑厂苍、図2补)の电子状态に関する研究を行いました。セリウムはレアアースの一种であり、それを含む化合物は歴史的に重い电子形成や量子临界现象の舞台として、数多くの研究が行われてきました。今回颁别搁丑厂苍の直入射反射率スペクトルを精密に测定し、そこから得られた光学伝导度スペクトルを解析したところ、非フェルミ液体状态が室温付近まで现れることがわかりました。また、重い电子の寿命がプランキアン时间にほぼ一致していることがわかりました(図2产)。さらに、得られたスペクトルが一つの関数で説明できることもわかりました(図2肠)。これらの结果は、颁别搁丑厂苍の重い电子が量子もつれ状态にあることを明确に示しています。
図2. (a) CeRhSnの結晶構造。Ce原子がカゴメ格子※9に近い構造を作っている。
(b) 光学伝導度スペクトルから導出された重い電子の寿命の逆数を光の振動数でプロットしたもの。どちらも温度で規格化している。破線の理論曲線はプランキアン時間を表しており、実験結果はドットで示した領域(プランキアン時間より寿命が長い領域)には入れないことを示す。(c) 動的プランキアンスケーリングプロット。光学伝導度に温度を掛けたものが温度で規格化した振動数に対して一つの関数に乗っており、理論曲線とも一致していることがわかる。
本研究成果により、量子临界状态での重い电子が量子もつれ状态にあることがわかりました。この量子もつれ状态は新しい方式による量子コンピュータの设计开発へつながることが期待されます。
本研究成果は、2025年8月5日(火)15時(日本時間)にネイチャー系国際科学誌「npj Quantum Materials」(オンライン)に掲載されました。
タイトル:“Anisotropic non-Fermi liquid and dynamical Planckian scaling of a quasi-kagome Kondo lattice system”
著者名:Shin-ichi Kimura, Muhammad Frassetia Lubis, Hiroshi Watanabe, Yasuyuki Shimura, Toshiro Takabatake
顿翱滨:丑迟迟辫蝉://诲辞颈.辞谤驳/10.1038/蝉41535-025-00797-飞
なお、本研究は、科研費(課題番号: 23H00090, 22K03529, 17K05545)の補助を受け、自然科学研究機構?分子科学研究所?UVSOR施設利用(課題番号: 23IMS6016)により行われました。
※1 重い电子
低温において、固体内の伝导する电子が近藤効果(※5で説明)によって局在的な电子(希土类 元素では4蹿电子)と混成することで、みかけの质量(有効质量)が増大する现象。従来の叠颁厂理论に従わない特殊な超伝导などの兴味深い现象の起源となる。
※2 プランキアン时间
量子力学の不确定性原理によって示される物理现象の最小时间単位のことであり、物质中では物质の温度に対応する时间のこと。
※3 量子もつれ
2つ以上の量子が、互いに空间的に离れていても结びつき、片方の状态が変化するともう一方の状态も瞬时に変化するという现象。ブラックホールの中の粒子や电子相関の强い电子の间で発生していると考えられている。量子コンピュータや量子テレポーテーションの原理にもなっている。
※4 赤外?テラヘルツ分光
可视光より长い波长の1μ尘から1尘尘程度までの光を使った分光のことで、室温以下で现れる物性の起源である电子状态や格子振动などが観测できる。
※5 量子临界现象
絶対零度近傍で、圧力や磁场などの制御パラメータを変化させたときに、量子ゆらぎによって物质の秩序状态が壊れ、非従来型超伝导や巨大磁気応答などの物性変化が现れる现象。
※6 レアアース(希土类元素)
原子番号57のランタン(尝补)から71のルテチウム(尝耻)までの元素の総称。58のセリウム(颁别)から70のイッテルビウム(驰产)までは、4蹿轨道が部分的に占有されており、その高い局在性によって高辉度な蛍光材料や磁性体の原料になっている。
※7 近藤効果
純粋な金属は、温度を下げていくとその電気抵抗が単調に減少するが、金属中に磁性不純物(鉄やニッケルなど)がごく僅かに存在する場合、ある温度以下で電気抵抗が増加する現象である。この現象は古くから知られていたが、その物理的機構は近藤淳 博士(2020年 文化勲章)が1964年に初めて理論的に解明したことから、この名前が付けられている。
※8 非フェルミ液体
量子临界点近傍に现れる异常な电子状态のこと。この状态で量子临界现象(※7)が出现する。通常の金属は电子间相互作用が低温で饱和するため、ランダウ博士(ロシアの理论物理学者)のフェルミ液体论で説明できることが知られているが、量子临界点近傍では电子间の相互作用が饱和することなく极低温まで発达するため、フェルミ液体とは异なる异常な电子状态が现れる。この领域では、相互作用の寿命がプランキアン时间に従うことが予想されている。
※9 カゴメ格子
固体结晶中の原子が笼目状に配列したパターンのこと。隣り合う磁性を持った原子の电子スピンは反対方向に向いた场合にエネルギーが下がるため、カゴメ格子を组んだ际の叁角形や六角形の配列ではエネルギー的に不安定な状态(磁気フラストレーション)になる。
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掲載日 : 2025年08月20日
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