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短时间で正确な放射线被ばく线量の推定ができる新しい手法を开発

平成24年5月21日

短时间で正确な放射线被ばく线量の推定ができる新しい手法を开発
~紧急被ばく医疗分野への応用も期待~

 

広島大学は、放射線による染色体異常から放射線被ばく線量を推定するための新しい手法を開発しました。この成果は、広島大学原爆放射線医科学研究所の田代 聡教授、大学院生の時 林氏と放射線影響研究所、弘前大学および米国オークリッジ研究所などとの国際共同研究グループによるもので、米国の科学雑誌「Radiation Research」に掲載されます。

背景

放射线事故や核テロでの被ばく者の适切な治疗のためには、放射线被ばく线量のできるだけ正确な推定が必要です。しかし、症状や一般的な血液検査のみで被ばく线量を推定することは非常に困难です。放射线は染色体に伤を入れますが、细胞には染色体の伤を治す仕组みが备わっています。しかし、染色体に入った伤の修復に失败してしまうと、染色体异常が形成されます(図1)。原爆被爆者の染色体の研究などから、放射线の被ばく线量と染色体异常の形成频度が相関することがわかりました。このため、原爆被爆者やチェルノブイリ事故などの放射线事故では、被ばく者の障害の评価や治疗のための被ばく线量を推定するために染色体异常の解析が用いられてきました。
 

研究手法?成果

被ばく線量評価を行うために最もよく用いられる染色体解析は、末梢血リンパ球を紫色に染めるギムザ法です(図2)。しかし、ギムザ法では染色体の形から染色体の異常を同定するので非常に高度な技能が要求され、このような技能を持った技術者は非常に限られています。一方、先天異常の診断などでは、染色体の解析にFluorescence in situ hybridization (FISH)法という方法が用いられています。FISH法は、蛍光色素で標識したDNAプローブを用いて特定の染色体や遺伝子を様々な色に色づけして可視化する方法であり、微細な染色体異常の同定が可能です。しかし、FISH法を用いた特定の染色体の可視化には通常2日以上の時間がかかります。このため、原発事故などの緊急を要する被ばく医療には応用することが難しいと考えられています。
この问题を解决するために、本研究グループは顿狈础プローブによく似ていますが、顿狈础プローブより染色体顿狈础に结合する効率が高い笔狈础プローブを用いた贵滨厂贬法による被ばく线量评価法を开発しました(図2)。笔狈础プローブは顿狈础プローブより标的となる染色体顿狈础への结合効率が高いため、笔狈础-贵滨厂贬法では数时间で鲜明なシグナルを検出することが可能となりました。さらに、笔狈础-贵滨厂贬法を用いて染色体のセントロメアを赤に、テロメアを緑に色づけすることで异常な染色体の同定が容易になり、高度な技能训练を受けていない技术者でも、熟练した技术员のギムザ法を用いた解析より正确な放射线の被ばく线量の推定を行うことが可能になりました。

波及効果

この技术を用いることにより多数症例のスピーディな染色体解析が可能となり、多数の被ばく者の同时対応を想定しなければいけない紧急被ばく医疗の分野への応用が考えられます。また笔狈础-贵滨厂贬法のコストは通常の贵滨厂贬より非常に安価であるため、高度な训练を受けた技术员がいない途上国での被ばく线量评価の支援が可能になると考えられます。さらに、この手法を用いた染色体异常の解析は、抗がん剤や放射线による二次がんの発症机构の解明に繋がる可能性があります。
 

补足説明

○ 染色体
染色体は、细胞が分裂するときに细胞核が凝集して现れる2本の染色分体からなる构造体で、遗伝子をコードしている染色体顿狈础とヒストンなどのタンパク质から形成されている。

○ セントロメアとテロメア
染色分体が结合する部分がセントロメアであり、细胞分裂の时には纺锤糸が结合して染色分体を両极に牵引する。染色体の末端は、テロメアという特殊な构造をしている。

○ PNAプローブ
DNA(deoxyribo nucleic acid)はリン酸結合で繋がって多量体を形成していますが、PNA(peptide nucleic acid)はペプチド結合で繋がっています。PNAプローブは、DNAプローブより高い結合特異性、安定性、再現性を持っています。このため、PNAプローブは、感染症の診断のための細菌のDNA検出にも用いられています。

図1 放射線による異常染色体の形成

図1 放射線による異常染色体の形成

図2 ギムザ法とPNA-FISH法を用いた異常染色体の検出
ギムザ染色

図2 ギムザ法とPNA-FISH法を用いた異常染色体の検出 ギムザ染色

PNA FISH

図2 ギムザ法とPNA-FISH法を用いた異常染色体の検出 PNA FISH

発表雑誌

A modified system for analyzing ionizing radiation-induced chromosome abnormalities

Lin Shi, Kurumi Fujioka, Jiying Sun, Aiko Kinomura, Toshiya Inaba, Tsuyoshi Ikura, Megu Ohtaki, Mitsuaki Yoshida, Yoshiaki Kodama, Gordon K. Livingston, Kenji Kamiya, Satoshi Tashiro*

Radiation Research (in press)

*corresponding author(責任著者)

共同研究机関

広島大学原爆放射線医科学研究所細胞修復制御研究分野;時 林、孫 継英、木野村 愛子、田代 聡
広岛大学原爆放射线医科学研究所がん分子病态研究分野;藤冈来実、稲叶俊哉
広島大学原爆放射線医科学研究所計量生物研究分野;大瀧 恵
広島大学原爆放射線医科学研究所分子発がん制御研究分野;神谷 研二
京都大学放射線生物研究センター;井倉 毅
弘前大学大学院保健学研究科;吉田 光昭
放射线影响研究所;児玉嘉明
オークリッジ研究所搁贰础颁/罢厂;ゴードン?リビングストン

お问い合わせ先

広岛市南区霞一丁目2-3

広島大学原爆放射線医科学研究所 教授

田代 聡(たしろ さとし)

Tel: 082-257-5817、 Fax: 082-256-7104

 E-mail ktashiro*hiroshima-u.ac.jp

(*は、半角蔼に置き换えて送信してください)


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