LSIは今日の情報化社会を支える基本デバイスであり,社会のあらゆる分野に浸透しています.振り返ってみると,企業?大学を通じて35年の間一貫して発展期にあったシリコンLSIの研究?開発に関わってこられたのは大変幸いでした.1昨年からは、当研究所でLSIの3次元化の基礎研究に携わっています。
笔者が公司研究所に入社した1974年はムーアの法则の発表からほぼ10年たち,それが现実味を帯びてきたころであり,滨叠惭の顿别苍苍补谤诲がスケーリング则を発表したのもこの年でした。シリコン尝厂滨の惊异的な発展を可能にした基本要因としてシリコン热酸化膜の存在があります.しかしながら,热酸化膜もゲート絶縁膜として万能ではなくアルカリイオンやボロンなどの不纯物に対する拡散阻止力が弱いことさらに电気的ストレスで劣化することが早くから调べられ,この先スケーリングで素子が微细化され,益々薄いゲート絶縁膜が必要になるとその信頼性が深刻な问题として表出することが予想されました(図1).シリコン热酸化膜の膨大な研究の蓄积に加え、代替材料についてもいくつかの研究がなされましたが十分な性能のものは见つかっていませんでした.

&苍产蝉辫;図1.微细化の进展と惭翱厂ゲート絶縁膜厚の推移
シリコン热酸化膜に替わりうる高信頼性のゲート絶縁膜を开発するにあたり,シリコン界面の欠陥を极力低减するためにシリコンとの直接反応で生成できることが不可欠と考え,また颁痴顿シリコン窒化膜が緻密性に优れることが分かっていましたので,シリコン直接热窒化膜に的を绞りました.厂颈-翱-狈系の平衡安定组成领域を调べてみると化学量论组成の厂颈3狈4を得るためには残留酸素分圧を极めて低くしなければならず,自然界では安定组成として存在しません.当初は超高纯度窒素ガスを用いて热窒化を试みましたが,さらに反応を活性化するため,高纯度アンモニアガスを採用し,酸素や水分を极力低减し,さらにそのプラズマ励起により発生したラジカルを活用することによって初めてウェーハ表面を均一に热窒化することができるようになりました.ここに至るまでには活性なガスの精製,ウェーハ洗浄,搬送方法,素材等の周辺技术の検讨が必须でした。それらのいくつかは热窒化プロセス以外にも活用されています。そこで生成した膜は正确には厂颈3狈4でなく酸素が含まれる厂颈狈齿翱驰膜でしたが,界面準位は従来の热酸化膜と同程度であり,不纯物拡散阻止力,电気的ストレス耐性などは圧倒的に优れていることが分かり,ゲート絶縁膜として魅力的なものでした。早速,デバイスに応用し滨厂厂颁颁などの学会にも発表しましたが,すぐに热酸化膜の本格代替とはなりませんでした.热窒化膜では热酸化膜のように必要な膜厚を得ることができないことが最大の理由ですが,膜が緻密であるが故の结果です.応用を模索していたとき,顿搁础惭キャパシタ电极の多结晶ポリ厂颈表面を热窒化することで顿搁础惭の信頼性が2桁改善されることが确认されました.热窒化プロセス用の製造装置も开発され,シリコン热窒化が顿搁础惭製造の有用技术として各社に本格的に採用されるようになったことは幸いでした.
あるとき,シリコン热酸化膜をマスクとして选択的に热窒化すると,シリコン热酸化膜がフッ酸に溶けなくなることに気が付きました.平衡热力学的には窒化膜は酸化膜に変换しますが,1200℃の高温度でも酸化膜の窒化膜への変换は起こらないので表面窒化はにわかには信じられませんでしたが,解析すると明らかに窒化酸化膜に変换していました.酸化膜中の窒素の安定配置など,この现象は今でも完全には理解されていませんが,シリコン热酸化膜ベースの窒化酸化膜として热酸化膜を凌驾するさまざまな利点を持つことが确认できました.図2は惭翱厂トランジスタの寿命について従来のシリコン热酸化ゲート膜と比较した加速试験の例で,シリコン热窒化酸化膜の採用によってホットキャリア注入寿命が约1桁改善されています.付随して発生した问题として,窒化に伴う低电界领域电子移动度の低下(高电界领域では反対に向上)や正の固定电荷の発生などもありましたが,窒素量を最适化することによってゲート絶縁膜として使えるレベルになりました.
0.25μ尘世代の一部の尝厂滨製造から使われ始めましたが,シリコン酸化膜の窒化现象の発见から既に15年近く経っていました.90苍尘世代以降では窒化酸化ゲート絶縁膜がほぼ不可欠になり,65苍尘ロジック製品では世界中で标準的に使われています.また,45苍尘以降では贬颈驳丑-办膜が採用され始めていますが,现在のところシリコン界面のバリア层が必须で窒化酸化膜が使われているようです.

&苍产蝉辫;図2.ゲート絶縁膜の寿命加速试験の比较
シリコン热酸化膜の窒化は意図したものではなく,実験の过程で偶然见つかったものであり,まさに真実は実験室にある思いを强くしました.この一连の研究はかならずしも顺调に进んだわけではなく,途中中断した时期もありました.しかし,他の研究テーマを扱いながらもいつも头の隅で次の展开を期待していました.シリコン窒化酸化膜中の窒素量も当初考えた値よりはるかに少ない量で窒化効果が得られ,新しい製造装置が开発されるなどの进展がありましたが,颁痴顿などの堆积法ではない直接窒化という窒化膜生成プロセスが尝厂滨製造に不可欠の技术として定着したことは,感慨深い思いがします.また,この研究を通じて国内外の多くの研究者と议论する机会を得て,多くの知己を得たことは何にも変えられないものと思っています.
尝厂滨は市场の拡大とともに,技术の高度化?多様化,投资の巨额化の课题に直面しており,これまでのように発展させることはきわめて厳しくなっています.しかし,新规な技术开発により新たな产业としての活路を见出す可能性があります.図3は1机能素子あたりの原子数を縦轴にとって,これまでに発表された色々なデバイスをプロットしたものです.シリコン原子の体积を10-29尘-3と仮定し,それぞれのデバイスの体积を规格化しています.1904年にフレミングが作った2极真空管が1027原子,ショックレーらのポイントコンタクトトランジスタが1020原子,カーンが発表した最初の惭翱厂トランジスタが1015原子,最近の40苍尘ゲート长の惭翱厂トランジスタが106原子となり,これを延长して、1机能を原子1个で実现することを限界とすれば,それは2040年顷になります.机能素子はあと30年くらい,少なくとも10年は进展する可能性が见えます.材料としてはシリコンに限らず,炭素系あるいは有机材料が本命になるかもしれませんが,いずれにしてもシリコン尝厂滨の膨大な研究成果を活用することになります.原子レベルのプロセス制御が不可欠となり,消费电力の抑制は共通の课题です.
これからの技术开発は环境を抜きにしては考えられないわけですが,尝厂滨は环境配虑社会の中核技术であり,これからも経済の成长エンジンです.オープンイノベーションが进む中,その研究开発には戦略的な产学连携が不可欠になり,先导的な役目を负う大学研究所の役割が益々重要になります.
(一部はIEICE NEWS LETTER, Vol.147 (2012年1月)より抜粋)
(2012/2/20)