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第55回 「Researchの意味」 榎波 康文 (2012/03/12) 

 ”Research”の語源はフランス語で”to go about seeking”だそうである。語源を見ると研究とは”何かにとりつかれて突き進む”ことのように思える。Researchは何度も単調とも思える実験を繰り返して行う間にある日突然ブレークスルーが生まれてくることもある。Researchでは、数回だめでもパラメーターを色々と変えて簡単にはあきらめないことが重要視される。1回未満しか実験をしない人の結果は明らかにResearchではないが、日本の修士レベルではその程度でもよいのかもしれない。

 大学では时间のかかる実験や何度も繰り返し行う実験を谁か他人にやらせてその结果を见てから自分が一绪に実験を始める场合と自ら谁もやっていない事に挑戦して先駆的なことを自ら见出す场合の2种类の研究アプローチが存在する。论文とはだれも过去にやっていない事を报告することによってその存在価値が高くなり多くの研究者に参照される搁别蝉别补谤肠丑论文となる。

 このようなことは大学で研究を行う人であれば谁もが知っていることであるが公司での研究开発は异なるようである。大学や他公司の谁かがうまくいったり行きそうだったりする成果を改良后製品化して、品质管理を向上させれば储かるとされてきた。もちろんベル研究所、滨叠惭、インテル、狈罢罢などは民间公司であっても先駆的な研究成果を报告してきた例は多い。以前、ベンチャービジネスの讲演会を闻いたことがある。その讲师は「ある地域でやっていることと同じ事をやっていない地域でやるだけでも储かる。」と述べていた。商人の世界ではこれが普通の考え方であるし、フランチャイズの基本的な発想である。

 バブル崩壊前から现在まで公司は先駆的な研究开発に极めて消极的であると以前共同研究を行っていた公司研究所所长から闻いたことがある。例えば板ガラスを作る会社は自动车会社等にガラスを売ることによって利益を上げているので、先駆的な研究はお金の无駄と経営者が考えても不思议ではない。しかしながら、多额の税金が使われた半导体公司の破绽に见られるように20年前と同じ事を同じようにやってももうからないことも事実であり、过去を全て精算し新规性の高いことに挑戦しなければ今后は公司も破绽するであろう。炽烈な価格竞争の前では、良质な労働力を背景にして得意としていた日本の品质向上に対する付加価値が色あせてきたともいえる。

 15年前アリゾナを走っている車の多くは古くボンネットは砂漠の灼熱でペイントが劣化し白くなったり光沢がない車がほとんどであったが、日本車だけはボンネットが白くなっていなかった。250CC小型スポーツ二輪車に乗ってエクソンMobile 1 以外の安いオイルを使うと高回転ですぐにオイルが焦げて回らなくなるし、日本車以外は常にオーバーヒートする可能性が高い過酷な環境である。企業派遣されていた板ガラスの研究者の話では、自動車会社に納める板ガラスを製品化する際にはアリゾナ試験と言われる試験があり、アリゾナの砂漠の中で耐久試験を行うそうである。したがって、その当時日本の車体ペイントやオーバーヒートしないエンジンもアリゾナ試験を経て納品されていたため、耐久性が高かったと思われる。

 现在ではアメリカ製のどの车もボンネットが白くなっている车はないし日本车以外でもオーバーヒートしない。车ひとつ例にとっても日本製の优秀さを示す証拠を简単には见いだせない。アメリカの中古车屋はフュンダイもトヨタも同じだと主张し、フュンダイのほうが安くて保証期间が长いのでおすすめだという。ウォークマンで有名になったソニー製ですらアメリカではサムソン製と同等に扱われている。「安かろう悪かろう」と言われた日本製品の评判が徐々に上がったように韩国製品の评判も上がっている。

 过去の例が示すように大学や公司の研究が先駆的で実用性が高ければその成果は产业に直结する。既存の物を売り続けるのも立派な仕事であるが、世の中を変えるような最先端技术を提供する公司はフランチャイズを行う近江商人の発想とは异なるはずである。周辺技术の成熟度や起业や贩売のタイミングも重要であるので、公司の研究开発は大学より短期的结果を求めリスクの低いテーマ选択にならざるを得ない理由も理解できる。

 言うまでもなく大学は本来リスクの高い先駆的な研究テーマに挑戦する场所であり、公司研究とは根本的に异なる。政治家に「2番じゃだめですか?」と闻かれて、公司経営者であれば「2番、5番でも十分である。」と答える。むしろ2番のほうが储かる场合もあるかもしれない。しかしながら、大学の研究者は「世界1じゃないと意味がない。」と多くが答える。また、研究が復兴に直接的かつ短期に役立つとも思えないが、フォトニクスの分野でも”復兴のためのフォトニクス”をキーワードにして海外の学会で宣伝をしている人もいる。これを见て大学での研究の意味やその存在意义を自问自答する毎日である。2011年の震灾からちょうど1年が経过しようとしている。
http://ireport.cnn.com/docs/DOC-753995

(2012/3/12)


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