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第36回 「好きなことを専門あるいは仕事にすることの難しさ」 岡田 憲司 (ナノデバイス?バイオ融合科学研究所 マタウシュ/小出研究室) (2011/08/30)

 私は考え事をするのが好きですが、普段自分の考えを话すことが得意ではないので、今回は少し长くなりますがそれについて绍介します。
 私は、自分の好きなことを自分の専门あるいは仕事にすることの难しさについて昔からたびたび考えることがあります。専门あるいは仕事にしたことを好きで居続ける难しさと言った方が良いかも知れません。最初にこれを考えたのは高校の时音楽に梦中になっていた时です。音楽は好きでプロになりたいと言う梦も持っていなかったわけではないのですが、音楽を自分の仕事にしてしまうと音楽が嫌いになってしまうのではないかと言う漠然とした思いがあり、私は早くから音楽のプロへの梦を捨てました。
 私は比较的勉强が好きだったので次の梦は研究者になりたいと言う物でした。研究者と言うと自分の好きなことだけやって食べて行ける职业だと思っている人が少なくないかも知れません。しかし実际にはよほど调べ抜いて所属する研究室を选ばない限り、自分の研究したいテーマと実际に研究できるテーマにはどうしてもズレが生じます。自分の実力が足りず、选択肢が狭くなることもあり得ます。さらには、私のような不埒な人间は特にそうですが、研究したいと思うテーマが途中で変わってしまうことなどもあります。高校の时、私は理系なので本来生物の授业は取らないのですが、あまのじゃくだった私は生物学を独学で勉强し、好きになり、极めたいと思い大学ではバイオを専攻しました。しかし今度はコンピュータや人工知能を极めたいと思うようになり、大学院では自分の过去の専门も活かしつつ、新しい兴味の対象も追えるバイオインフォマティクスの道を选びました。コンピュータやプログラミングが好きであることを生かしてベンチャー公司でプログラマになったこともあります。しかしどれも纯粋に100%好きで居続けることは难しいことでした。
 自分の本当に兴味のあることと実际の研究テーマが违う研究者と言うのは意外と居るものです。私の场合今所属している研究所の研究テーマのほとんどが私の兴味の持てるものであることやどんな研究テーマだろうとそれを极めることには大きな意义があると思えるようになったのでこんなことが书ける(と言ってもまだ深い研究の道のほんの入り口に立っているだけなのでそう思えているだけなのかも知れない)のですが、それでも雑用などもこなさなければならず、本当に好きなことだけやって生きて行けていると言う状态とは言えないのが恐れながら申し上げますと现実です。
 ところで少々话はずれますが、研究者と言えば人とは违う物の见方あるいは考え方をすることが重要だと言う考えが世の中にはあります。私もかつてはそう信じ込み、なるべく人とは违う物の见方をするよう心がけていた、オリジナリティーを大切にしていた时期がありました。その时の影响もあるのか、私は人とは违う物の考え方をすることが多いですが、実际には物事の考え方が人と违い过ぎることは苦痛であることが多いです。生きる上ではオリジナリティーにも増して、ユニバーサリティーと言う物が求められるものなのです。このことも私の人生でしばしば考えてきたテーマです。
 话を元に戻しますと、本当に自分のやりたいことをやるためには自分のやりたいことをやるための会社を起业すれば良い、と言う考えもあります。しかし、私にはもちろん経験がないので言いきることはできませんが、会社を兴した所でやはり自分のやりたいことだけやって生きてはいけないと言う现実は研究者とそう変わりはないのではないかと言うのが私の推测です。
 ところで私は会社の社长などと言う大それた物になるには向いていない性格なのはだれの目にも明らかなのですが、だからこそ起业と言う物に憧れを持っている面があります。仮の话としてそこでもし本当に现実のことを一切気にせずにやりたいことだけがやれるとしたら何をやりたいかと言うと、私は前に特许事务所で働いていたことなどもあり、知的财产や知的生产活动について兴味を持っています。知的财产である着作物やアイディアは、谁でも简単にコピーや真似が出来てしまうと言う性质を持っています。そこで法律や技术で许可のないコピーや真似を厳しく制限しようとしているのが现在の时代の流れです。
 しかし私は経済学には素人なので荒唐无稽な话なのは自覚していますが、コピーや真似が容易であると言う现実をありのままに受け入れ、新しい経済システムを1から构筑しようとしたらどうなるでしょう?コピーや真似をあるがまま受け入れてしまえばそれは共产主义だと思う方もいるかも知れません。确かにそれは今の资本主义と言う経済システムとは全く违ったものになるかも知れません。しかし私はそれが资本主义の更なる进化を遂げた新しい物になると言う予感がしているのです。
 私がもし现実のことを気にせずやりたいことを思い切りやれる环境があれば、新しい経済システムと现在の経済システムの桥渡しとなる仕事をし、両方の経済世界の覇者を目指したいと思ったりします。铃木健氏の笔滨颁厂驰や原丈人氏の公益资本主义など、本気で次世代の资本主义を考えている人のアイディアに比べたら私の考えなど取るに足らないものかも知れませんが、今日は自由に文章を书かせて顶けると言う机会に甘えて大言壮语を吐かせて顶きました。ちなみにこんな好き放题のことをブログにも书いていたりします。
 しかし私は不埒な人间なので前述のやりたいことを思い切りやれる环境ができたら、きっとまた违うことがやりたくなることでしょう。

(2011/8/30)


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