麻豆AV

第176回  「スウェディッシュブルー」黒木 伸一郎(2019/06/18)

 この数年で、特に兴味をもっているものが、製鉄である。特に、中国地方ならではというところで、たたら製鉄である。当方、一番古い趣味は天体観测と日顷言っているが、実はもっと古いのが考古学、というより土器探しで、実家のある九州宫崎では、掘ると意外にでてくる。いいのが出てくると、ご近所の埋蔵文化财センターに持ち込んで学芸员の方にいろいろお话しを伺うという小学生だった。週何度もセンターに通うので、学芸员の方とも仲良くなって、バックヤードでいろいろ见せてもらうのだが、水晶でできたキラキラした矢尻にワクワクしたり、年代ごとの土器の土の质の违いに唸ったりした。古い鉄はその延长にあったと思うが、錆びをまとったその鉄に、远い时间の流れへのあこがれを感じたものである。

 2012年に広岛大学に教员として着任して、子供を连れて出かける机会も増えた。夏は海である。そういうわけで、日本海侧?岛根に游びに行ったりするわけであるが、浜辺でともかく惊いた。波打ち际が真っ黒なのである。真っ黒いのは、砂鉄である。岛根県の方には普通なのかもしれないが、太平洋の海の近くに育った身では、とても惊いたわけである。子供と波打ち际の砂鉄を沢山集めて持ち帰った。砂鉄は多量に砂を含んでいたが、乾燥させた后、子供たちがペットボトルと磁石でせっせと“精製”してくれた。得られたのはキラキラした真っ黒な砂鉄である。こうなると古代の鉄へのあこがれとあいまって、砂鉄を钢にしてみたくなる。

 いかに钢にするか、子供たちとも随分议论したわけであるが、大学宿舎を住まいとする身、さすがに宿舎で製鉄をするわけにもいかず、难しいなと思っていた。そんなとき、子供たちが小学校から国営备北丘陵公园の行事案内をもらってきた。その案内に公园内の古代たたら工房で、たたら製鉄をするという。しかも日刀保たたらの木原明村下の指导のもの行うとのこと。これは素晴らしい!行かなくてはと参加した(正确にはこのたたら鉄つくりを知った年は、ストックホルムに长期滞在予定で泣く泣く见送り、その次の年に参加した)。

 たたら鉄つくりは、早朝から开始し、真砂土と粘土を混ぜ合わしブロックを作りから始め、筑炉、炉を乾燥させつつ、すみ割り、深夜1时ころに火入れ式を行い、砂鉄を计量し、初种式、それからは时间をみつつ、火の色をみながら砂鉄と炭を交互に入れ続け、途中ノロ出しをしながら操业を行い、最后は炉をくずし、鉧(けら)だしして终了。まるまる2日间(ほぼ彻夜)の鉄つくりでした(実际のたたら製鉄では3日3晩)。鉧の部分部分にみえる玉钢の金属色をみた感动というのはなんともいえないものでした。参加2年目となる昨年は、恐れながらも村下代理を拝命し、最初から最后まで炉をみさせて顶いたが、鉧だし后に、木原村下からそっと言叶を顶きました。この言叶は宝ものです。

 さて、前回研究打合せ&补尘辫;测定でストックホルムに行っていたときのこと。休日にいきつけの化石鉱物屋さんで、木棚を渔っていたところ、ある引出しに、ガラス状の青色の块がごっそり。とてもきれいなのですが、自然の岩石にはみえない。お店のお姉さんに、これは何と闻くと、スラグ(鉱滓)だよという。スラグ?なんの?ということで闻くと、製鉄をするときにでるスラグとのこと。一绪に行っていた下の子(同じく玉钢に梦中な女の子)と、奥辞飞と大はしゃぎで喜んでしまいました。日本の鉄(たたら製鉄)のスラグというと、ノロ出しして出てきたものは、冷えると黒いわけですが、スウェーデンではどうも青いわけです。お姉さん曰く、顿补濒补谤苍补の郊外の森を歩いていると、见つかるとのこと。手に取ったのは17-18世纪のものかなとのことでした。スウェディシュブルーと呼ばれる石(スラグ)との出会いでした。

 スウェーデンは北の町キルナの鉄鉱山はよく知られていますが、その昔は湖沼で鉄鉱石を採取したようです。湖底から涌き出る地下水に鉄分が含まれていて、これが寒い湖沼で冷却され酸化鉄が析出し、これが集まりコイン状の酸化鉄の块が湖底にできるとのこと。そのまた昔、9世纪ころのバイキングの人たちはそんな鉄でもって、鉄製の武器を作ったわけです。スウェーデンでは古くはこの湖沼鉄鉱石を用いて製鉄を行ったわけですが、不纯物は日本とはだいぶ违うため、结果スラグはガラス状で色もちがうのかと思います。でもスラグがこんなきれいな色になるのはいいなと思ってしまいます。

 バイキングの人たちの生活の中心に、製鉄と锻冶屋さんがあったようですが、スウェーデンの方は、技术で生きるという明确なスピリットを持たれている方が多いようにも感じていますが、もしかするとこんなところにその起源があるのかもしれないと胜手に思ったりしています。スウェーデンの先生方とは、シリコンカーバイド半导体での极限环境用集积回路?センサの研究开発を一绪に进めさせて顶いておりますが、别の観点で、スウェーデンと日本をつなぐ製鉄の极めて个人的なお话しでした。とりとめもないものですが、もっと深く知りたいなと思っているこの顷です。

 

けふもまた こころの鉦を 打ち鳴らし 打ち鳴らしつつ あくがれて行く 若山牧水

(2019/06/18)

たたら鉄つくりの様子&苍产蝉辫;

スウェディッシュブルーと砂鉄(岛根产)


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