美しい生活を创造する、ヒトを彩るサイエンス
取材日:2018年7月17日
化粧品の世界シェア第4位である株式会社 资生堂。2017年には売上高が1兆円を突破し、『1兆円公司』の仲间入りを果たしました。化粧品分野で世界を牵引している资生堂ですが、医薬品や食品まで事业展开を进め、“世界で胜つため”に新たな高みを目指しています。成长への弛まぬ一歩を歩み続ける资生堂において、研究开発职を歴任し、现在骋滨颁统括运営部 人材开発グループのマネージャーを务める石舘さんに、资生堂での研究开発、ご自身が歩んだキャリアについてお伺いしました。

株式会社資生堂 石舘 周三 氏
略歴
【学歴】
1982年3月 东京大学理学部生物化学科卒业
1987年3月 东京大学理学系大学院生物化学専攻博士课程修了
【职歴】
1987年 ㈱资生堂 研究所入社
1991年 资生堂アメリカテクノセンター 副所长(米国コネチカット州)
1993年 惭骋贬/ハーバード皮肤科学研究所 资生堂リエゾン(米国ボストン市)
1995年 ㈱资生堂 搁&补尘辫;顿戦略部
2006年 资生堂(中国)研究开発中心 董事?総経理(北京市)
2011年 ㈱资生堂 中国技术代表(北京驻在)
2014年 ㈱资生堂 化粧品开発センター情报开発室长
2016年 ㈱资生堂 研究推进部长
2018年 ㈱资生堂 骋滨颁统括运営部マネージャー
(现在に至る)
前进し続け、高く成长している资生堂
资生堂は化粧品?美容を主とした公司で、社员の大部分が女性とお闻きしました
私が资生堂に入社した当时から、女性が多かったですが、现在では全社员の约8割が女性です。しかし、入社当时の研究开発は、ずいぶん女性は少なかったです。女性が少ないために、当时の男性研究员は、男性であってもマスカラや口红を自身で试していました。まず、自分自身で使って、どう感じたか? どう思ったか?という物の良し悪しを判断していました。やはり、化粧品は“好き嫌い”や“感覚”に依存することが多いので、男性であっても、自身の感性を研ぎ澄ませ、研究者というより职人のような视点で取り组んでいました。その职人的な研究にハマる研究员も多くいて、のめり込む男性研究员が多かったです。
现在では、研究员も女性がほぼ半数を占めるようになってきました。その理由は、女性の社会进出が盛んになってきた社会のニーズもありますが、资生堂では特に、寿退社がほとんどなくなったことがその大きな要因だと思います。昔は、子どもができたら仕事を辞めるという寿退社が多くありましたが、现在では、出产前/后休业や育児休业といった福利厚生が充実しているため、辞める女性がほとんどいなくなりました。また、职业柄?业界柄、资生堂は女性人気が非常に高く、优秀な女性が资生堂を志望してくれます。そのような女性を採用し、彼女たちが资生堂で働き続けてくれるため、现在、女性が多くなっていると思います。ただし、女性だけというわけではなく、男性でも十分に胜负できる公司であるとも思います。
最近は、女性だけでなく男性も肌や美容に気を遣う方が増えています。女性の化粧品以外では、どのような研究を行っていますか
资生堂では、男性向けの製品开発を昔から行っていました。例えば、私は髪の毛の研究をしていました。人间の髪の毛は男性ホルモンとの関係が深いですが、同じ男性ホルモンでも头顶部と侧头部では、男性ホルモンとの関係性が违います。その原因やメカニズムは生物学的に全く分かっておらず、どうして? なんで?という点で、非常に面白い分野です。いまだに方がついていません。また、髪の毛に限らず、皮肤の老化やしわ、シミなど、谜が多い部分ばかりで、特に皮肤と老化に関しては、私が入社する前からずっと研究が盛んに行われていました。しかしながら、これらは生命の危机に直结するところではないので、美容について兴味を持つ人しか取り组みません。そのため、研究が进展しにくい分野だと言えます。
资生堂は2017年に売り上げが1兆円を超えるという成长が着しい公司ですが、その要因はどのように考えていますか
様々な要素がありますが、今の新しい社长になってから、着実に伸び始めたと思います。
今の社长は,资生堂出身ではなく、外部から来ました。そこで、100年以上に渡って构筑してきた资生堂が変わる必要性を説き、新しい风を社内に吹き込みました。それによって、いろいろな点で、新しい视点から会社が変わり始めました。
また、円安も大きな要因の一つです。円安ということは、海外での売り上げが伸びると、その効果はより大きくなります。またインバウンドも重要でした。例えば、中国の方など海外から日本にいらっしゃった方が、日本国内や免税店で资生堂の商品を买ってくれることが、とても追い风になっています。
创业以来100年以上に渡って化粧品?美容に関する研究开発を行ってきたことにより培った财产?メリットはどんなところに感じますか
资生堂ほど、长く化粧品や美容に携わっている公司は世界中で多くはありません。长い歴史があるというメリットは、やはり経験です。例えば、现在化粧品の世界では、动物実験はやらないというルールができています。それは、动物爱护の考えが広く周知されてきた结果、贰鲍各国で动物実験を行った製品を売ってはいけないという法律ができたためです。そのため、化粧品に関して动物実験をやらないことになりました。つまり、新しい商品を作ったときに动物が使えないということです。そこで、长年の経験の蓄积が重要になります。実际に似たようなものが入った商品を売って、お客さまからどんな意见が来たのかという経験を基に、それらの作用が予测可能になります。つい最近できた公司と比较して、彼らがもっていないデータをもつこと、それが资生堂の絶対的な强みであると感じています。
讲演时の様子
グローバル化を进める资生堂の研究开発职
会社内に外国籍の方は多くいらっしゃるのですか?
国内の研究拠点で働いている約700人の中で、30人程度が外国籍の社員です。一番多いのが、中国系の社員です。また、日本国籍だけど帰国子女の方もおり、そのようなグローバルな人材を今後も求めていきます。やはり、資生堂は120の国と地域に向けて商品開発を行っているので、日本人だけでは十分ではありません。そのため、基礎研究や商品開発をグローバルにしていくために、ダイバーシティーを求めています。現在は、社員の5 %に満たない程度しか、外国籍の社員はいませんが、近年の採用では10 %程度を外国籍の方を採用しています。最終的には、全社員の10 %程度を外国籍の方にしていければと思います。
社内の博士研究员について教えてください。学位取得者はどの程度いらっしゃいますか。また、どのようにステップアップしていますか
国内の研究拠点で働いている约700人の中で、100人程度でしょうか。化粧品は、様々な分野から成り立っているので、薬学、物理学、化学、机械工学、生物学など、ありとあらゆる理系の分野から、学位取得者が入社してきます。また、化粧品学を大学时代から研究している方はほとんどいないので、基本的には会社に入社してから、どのように进むか决定します。その中で、博士や修士に関係なく、化粧品の研究にハマりましたという方が多くいます。研究をするだけでなく、研究者として入社してもその道を外れる人もいますが、それはそれで面白いです。学位取得者の中には、女性も多くいます。
キャリア选択とそのきっかけ
石舘先生のキャリアについてお闻きします。博士に进学した理由やきっかけはありましたか
もうちょっと研究がしたかったから、という理由に尽きます。私は、生物化学科を卒业していますが、卒业研究のときには生物物理学に近い分野の研究をしていました。その研究室で、いろいろなことをやりました。例えば、筋肉タンパク质であるアクチンの重合メカニズムなどについて、研究しました。また当时は、分子生物学が大流行していた时代で、笔颁搁とかが花形の研究でしたね。元々、生物に兴味があったので、研究することが面白いなと思い、研究をもうちょっとやりたいと思いました。
化粧品?美容分野、そして资生堂を选択された理由を教えてください
研究室の先辈が资生堂の研究所で働かれていて、资生堂がきちんとした生物学の研究をしていることを教えてもらいました。それが资生堂を志望した理由です。しかしながら、研究に従事するのであれば、大学に残り研究をすることが一番であるとも思います。结构大変ですが。私は、大学に残る道もありましたが、もういいかなという思いもあり、もっと违うことがやりたいという気持ちが强くありました。そのため、资生堂に入社する际には、研究以外でもやりますよという気持ちで入社しました。その后は、研究职を経て、海外関係の仕事をずっとしてきました。
长い期间に渡って海外で业务に従事されていますが、その経験で得たことを教えてください
日本が当たり前でないことですね。日本が、かなり特殊な国だと初めて分かりました。日本は居心地がいい国で、海外に出たくないという気持ちも分かる気もします。私自身も、自分の希望で海外勤务をしたわけではありません。资生堂では毎年一回、自分の状况を会社へと申告しますが,海外勤务を希望したことは一度もありません。しかし、海外に行ってみないか?と言われたときに、「おもしろそうですね。」と言ったことはありますが。
アメリカでは、资生堂と研究所や大学との桥渡し役のような仕事に従事しました。ベースは研究ですので、研究の话は対等にできましたが、ビジネスが络んでくると难しかったです。例えば、知财特许に関わる契约や共同研究の契约など、これらについては、かなり勉强しましたね。勉强して思いましたが、ビジネスについて知っていることは非常に重要です。そのような点をよく知っている大学の先生は、研究费をよく取ってきます。アメリカでは、大学の先生は自分の研究室を経営する経営者です。そのため、自分の研究室について、プレゼンをして、ここにお金を出せば、こんな良いことがありますよと言って、研究费を稼ぎます。また、学生や部下を操るこつは、まさに経営者と一绪です。つまり、アカデミアで优秀な人は経営者としても优秀です。このことについて、アメリカに行って、様々な大学の教授と接する中で、改めて感じ、そして彼らと実际に仕事をすることで、とても良い経験になりました。また、公司における企画书や提案书は、研究费の申请书とかなり同じだとも思いました。内容は违いますが、ある程度中身を知らない人に対して、どれだけ自分の研究(企画)が魅力的であるかというプレゼンをし、お金を付けてもらうことは、研究费申请、企画书作成に共通しています。このような点について、日本ではわかりませんでしたが、アメリカに行きその同一性を感じました。
先生は帰国后、搁&补尘辫;顿戦略室に所属されましたが、そこはどんな部署ですか。また、研究戦略を立てていく上で、心掛けたことを教えてください。
搁&补尘辫;顿戦略室は、毎年の研究所研究开発部门の年度计画とか3か年计画とか长期戦略だとか作る部署です。そこでは、“みみっちくならないこと”を心掛けました。例えば、研究室では限られた予算をどう使っていくかということを考える必要がありますが、研究所単位で见てみると、金额が研究室の2桁くらい上を考える必要があります。10亿とか100亿とか,それくらいの大きな金额を考えるときに、みみっちくなってしまうと、大きな前进ができません。
学生时代の経験から、研究者として役に立ったことはありますか?
色々なことに兴味があったので,讲演会や学会発表などの人の话をたくさん闻きました。自分の専门しか知らないと、絶対的に自分よりできる人に太刀打ちできないような気になります。そこで、自分の専门外の话を闻くことで、视野を広げ、そういう人たちに胜てるチャンスを得られると思います。そこで、兴味のあることは色々と挑戦することがいいと思いますし、意外とそのような経験はその时には无駄でも、结果的には良くなることもあったなと思います。
最后に、これから就职や研究に従事していく学生たちへメッセージをお愿いします
私は今、採用担当で、就职试験の面接もしています。その时に、「最后に何か质问は?」と言うと、「就职するまでに何かやっていた方が良いことはありますか?」と良く闻かれます。私は、その答えは一つだと思っていて、今やっている勉强を必死にやることに尽きると思います。今行っている研究は、今しかできません。会社に入社したら、「こういうことをやってください」ということが多くなるので、就职までにやるべきことは、今やっている研究をとことん行い、良い结果出すことだと思います。また资生堂に入社するならば、英语の勉强をしといてねとも言っています。このように,学生さんに「何をしたらいいか?」と闻かれたら、勉强しろとしか言えません。社会人になったらそんな时间はないので。
取材者感想
女性の化粧品や美容分野の最前线を走る(株)资生堂ですが、男性を対象とした化粧品や医薬品、そして食品まで幅広く展开していることを改めて知りました。そして、世界で胜てる公司となるために、絶えず成长を目指していく姿を教えていただき、世界の第一线で研究开発していく楽しさと、その责任感の重さを感じました。歩みを止めず、常に前进していく心持ちや、海外で研究する?生活することの意义を教えていただき、自身の今后の研究人生をさらなる前进ができるものとしていくために、しっかりと见つめ直そうと思いました。
取材担当:広島大学グローバルキャリアデザインセンター特別研究員 梅原 崇