
好きなことを、知りたい。
氏名:中坪 敬子
専攻:数理分子生命理学専攻
职阶:助教
専门分野:発生生物学
略歴:早稲田大学大学院理工学研究科博士课程后期修了、理学博士。日本学术振兴会特别研究员笔顿、早稲田大学教育学部助手、东京都临床医学総合研究所研究员、広岛大学大学院理学研究科助手を経て现在に至る。専门は発生生物学で、発生过程における形态形成机构を明らかにするために、ウニ、マウス、ラット、培养细胞を用いて、転写因子や细胞外基质の机能解析を行っている。着书:无脊椎动物の発生(共着、朝仓书店、2005年)。趣味は、登山、バードウォッチング等自然観察一般。
生物学の研究者になった理由は、一言でいえば、もの心ついた时から生き物が好きだったこと、そしてそれを励ましてくれた人々との出会いがあって、私の生き物好きのアンテナを今日まで出し続けていられたことだと思います。
生き物に関する最初の思い出は、3歳の顷、亲戚から送られてきた絵本でした。物语の絵本の中に1册、身の回りの风景の中に生き物が描かれた本が入っていて、本のページをめくっては、お散歩気分に浸っていました。特にギフチョウやキタテハといった玄人好みの蝶のページが好きで、しまいには、本がぼろぼろになり、父が何度か製本しなおしてくれました。実际に生き物に触れるようになったのは、幼稚园の时でした。引越した家の前が県立公园に隣接する森で、本の中でしか知らなかった生き物の世界がそこにありました。
小学校に入学して、最初の出会いがありました。担任の惭先生です。惭先生は、本当は天文学が専门でしたが、1年生に星の话をする机会はなかったのでしょう、生物を热心に教えてくださいました。教室には、池のような大きな水槽の中に生き物があふれていて、花坛には、多くの季节の花が植えられていました。何よりもありがたかったのは、私が発する生き物に関する质问に面倒くさからずによく答えてくださったことです。私もそれがうれしくて、押し花标本を作ったり、観察日记をもって行ったりしました。惭先生は、私が3年生になる时に転勤されましたが、「生物を好きな気持ちを大切に。将来、生物の研究ができるといいですね」という一言が、その后の励みになりました。
私の生物好きは、中学高校をへても変わらず、早稲田大学で生物学を学ぶことになりました。大学2年生の夏休みに、馆山のお茶の水女子大学の临海実験所で临海実习に参加したことが、私が発生生物学を専攻する契机となりました。実习は、菊山荣教授による磯の生物の系统分类と安増郁夫教授によるウニを中心とした棘皮动物の発生でした。多くの分类门に属する海产生物にふれて、私达学生は、生物の进化と多様性について実感させられました。とりわけ、私を魅了したのが、ウニの発生実习でした。卵と精子を顕微镜下で混ぜると、精子の侵入点から受精膜があがり、それまで眠っていた卵が约1时间ごとに卵割を繰り返すようになります。半日后には、中空のボール状の胞胚が、受精膜を溶かして泳ぎだし、実习室のあちこちから、唤声があがりました。その后、胚は原肠が陥入し、プルテウス幼生へと剧的に形态を変えていきました。その间、たったの2日间でした。実験所のすぐ前には、太平洋の波が打ち寄せる砂浜が広がっていましたが、私は目の前で刻一刻形を変えていくウニの発生の美しいドラマに梦中になって、顕微镜を夜半まで覗いていました。そして、発生过程における细胞の运命や分化を决定する仕组みや细胞の移动や形态の変化を司る形态形成运动の机构を知りたいと思うようになりました。実験所では、また、海产生物の研究者の方から、馆山の临海実験所がアメリカ人の発生生物学者である団ジーン先生のご尽力で设立されたこと、発生学の分野では女性の研究者が多いことを伺ったことも心に残りました。
卒业研究では、迷わず安増先生の研究室の门をたたきました。当时、安増先生は日本动物学会の学会赏を受赏され、ウニの受精とエネルギー代谢の研究に力を注がれていました。ウニの発生の形态形成机构を知りたい私は、动植物轴に沿った胚の领域化を尝颈+や代谢阻害剤で胚を処理して解析しました。幸い先辈达の研究蓄积があり、内中胚叶の领域化には、16-64细胞期と孵化后の胞胚期が重要であることが分かり、2编の论文を修士课程の修了までにまとめることができました。しかし、実际何の因子が関与しているのかは解らずじまいで、ウニの形态形成机构を知りたいという思いとはほど远い状况でした。
さて、生物学の研究者として生きていくためには、车でいえば、运転免许に相当する博士の学位が必要になります。ポスドク制度が今日ほど整备されていなかった当时、アルバイトで生计をたてながら研究を続けている先辈が多かった上に、博士号を取得した女性は早稲田の生物学教室にはいませんでした。将来の见通しもなく、体力も自信もないが、研究を続けたい私は、ある日思い切って博士课程への进学について安増先生に寻ねました。研究方向に関するディスカッション后、先生は学位を出す条件を二つ出しました。一つ目は「できれば平均的男性の2倍论文を书くこと」で、ああやっぱりという気持ちでしたが、二つ目が惊きでした。「结婚すること。」目が点になりました。安増先生は、个人的见解との前置きをされて、一度しかない人生、研究だけではもったいない、本当に研究が好きならば、子育てをしながらでも続けようとするし、続けられる。そういう人生を送っている人のほうが、研究だけの人よりも素晴らしいと思うとおっしゃられ、実例をあげられました。実际、ウニの研究者には、子育てをしながら研究を続けている人が多くいました。この时の会话は、研究者の人生を特别に考えていた私の肩の力を抜いてくれたように思います。私は、博士课程入学直前に、ウニの骨片形成机构の解析により中胚叶の分化マーカーを探す方向に研究テーマを変えて、学位を取得しました。安増先生と话した二つ目の条件をクリアしたのは学位を取得した后のことでした。
「生き物のこと、知りたいこと、いーっぱいあるんだ!」、小学生の息子が毎日発する质问に答えながら、研究者の原点は、好きなことを知りたいと思う気持ちだと思っています。